記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

でも振り返れない。

幻聴かも知れないし、そうならまたがっかりしたくない。

声の主は分かっている,諦めなければ忘れなければと心の中から必死に追い出そうとしている愛しいユキだ。

ユキの声を忘れるはずがない。

ユキは2年もマリの声も姿も何もかもきっぱりと忘れていたのに、理不尽だ。

マリは一瞬立ち止まったが振り返りもせず足を踏み出した。

「マリ待ってユキだよ。マリを迎えに来たんだ。みんな解決したから、マリこっち向いて」

「ユキなんて知りません。私も記憶をなくしてしまいましたから」

精一杯の皮肉を込めてそう言ったマリを、ユキは後ろから抱きしめて

「そうか、なら思い出させるまでだ。俺の愛情を甘く見るなよ」

ちょっと拗ねたような声でユキはマリの耳元で囁いた。

マリは嬉しいのか腹立たしいのか恨めしいのかよくわからない感情で涙を流していた。

ユキがマリを振り向かせて泣いているマリを見て困惑している。

「どうしたマリ、なんで泣いているんだ?」

「わからない。勝手に涙が流れて来て止まらない」

そういうと今度はワーッと声をあげて子供の用に泣きじゃくった。

「マリごめん、でもここでそんなにマリを泣かせていると、通報されそうだ。マリの滞在しているホテルに行って話さないか?」

とユキがおろおろしながら言った。

マリもここが大通りなのを思い出した。

行きかう人が怪訝な顔で二人を見ている。

これはやばい本当に警察に通報されてしまいそうだ。

マリは大きな黒縁のダサい少し色の付いた眼鏡をかけてキャップをかぶっている。

髪の毛をキャップの中に押し込んで髪も隠しているので、モデルのユキだとはわからないだろうが警察が来たら身元もばれる。

マリは大急ぎでユキの手を取ってコンドミニアムまでユキを引っ張っていった。