記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

コーヒーを淹れる為にキッチンに行ってトレイを持ってテーブルに置くと、ケンが食い入るようにテレビを見ていた。

「そんなに面白いドラマなの?」

と言って画面に目をやると、彼女が写っていた。女優になったのか?

「マリ」

と言ってケンは一筋の涙を流した。

ケンは慌てて目をこすって涙を拭いた。

「ケン、なんでこの女がいいの?私では駄目なの?弁護士なんかやめて村に帰ってあの家で二人で暮らそうよ。私東京なんて嫌い。帰りたい」

裕美は心の中で何かがプチンと切れる音がした。

ケンに抱き着いてわんわん泣いた。

ケンは抱きしめ返してはくれなかった。

「裕美、ごめん。俺にはマリだけなんだ。マリがいるこの東京からはもう動けない。マリのために弁護士になったんだ。二人で頑張ってマリが俺を弁護士にしてくれたんだ。弁護士を辞めることはできない」

ケンはそう言ってもう一度ごめんというと自分の部屋に行ってしまった。

裕美は風呂に入って意を決して、下着姿でケンの部屋に入っていった。

ケンは机に座って小さなぬいぐるみをじっと見つめていた。

「ケン、抱いて」

そう言って背中から抱き着くと

「裕美、妹を抱けないよ。それに俺はマリ以外の女には反応しないんだ。マリ以外抱けないんだよ。俺にとってマリだけがただ一人の女なんだ」

そう言って裕美の手を外すと、風邪ひくぞと言って自分のカーデイガンを脱いで裕美の肩にかけた。

裕美は泣きながら自分の部屋に飛び込んで、ケンのぬくもりのするカーデイガンを抱きしめて自分の敗北を悟った。