記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

何時間ここにいたのだろう辺りは、暗くなっている。

裕美の家までゆっくり歩いて20分ほどだ。

家に入ると夕飯の美味しそうな匂いがした。

ただいまと言って玄関を入ると、裕美が飛んできた。

「よかった。帰ってきた」

「なんだそれは、帰ると言っただろう。おかえりもないのか?」

「ウフフ、そうだった。ケンお帰り。今日は金目の良いのが入ったから煮物にしたよ」

「それは楽しみだな。腹減った」

そう言って自分の部屋で着替えて、まず恵子さんの位牌に手を合わせた。

キッチンの前にあるダイニングのテーブルで裕美と食事をする。

ここでいつも恵子さんが作る美味しいごはんを3人で食べた。

裕美に話があるからと片づけたら居間に来るように言った。

ソファーに腰かけて、緊張する裕美に優しく話を切り出した。

一法律事務所に行ってまたそこで働くように決めてきた事。

事務所に通い安い所に、マンションもすでに契約した事を話した。

伊藤先生にはなるべく早くに出社するように言われた事も…

裕美には一緒に東京に来てマンションで暮らしてもいいしこの家に一人で暮らしてもいいと言った。

裕美のいいようにするといいと言うと、もちろん一緒に行くと言った。

東京に住めるなんて夢みたいと嬉しそうに話す裕美に、とにかく49日が済むまでは裕美はこの家にいるように言った。

49日の法事の後一緒に東京に行こうというと分かったと言った。

そしてこの家はそのままにしておく事、時々裕美が帰って来て手入れしていけばいい。

誰かに頼んで週に一度くらいは風を入れてもらえば助かる。

恵子さんの位牌とお父さんに位牌は持っていけばいい、仏壇はなかったのでお父さんの位牌も箪笥の上に祀ってあった。

そして、恵子さんの葬式の日に会いに来たマリの話をしようとすると、裕美は聞きたくないと言って部屋に行ってしまった。

結局その日はマリの話をすることはできなかった。

1週間後にはユキは先に東京に行く事になっているのでその後も何度か話そうとしても、そのたびに聞きたくないと言って拒否された。

それで、ユキは恵子さんと裕美宛ての手紙を書いて恵子さんの位牌の前に置いて家を出た。

次に来るのは恵子さんの49日の法事の時だ。

こちらの風習もあるだろうから、俺は何の役にもたたないと思うので泰樹に裕美を助けてやって欲しいとお願いして東京に帰っていった。