記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

そういった時、個室のドアが急にあけられて当の本人三崎宗吾が息を切らして入ってきた。

「父さん、どういうつもりなんだ。マリさんに何の用があるんだ」

と食って掛かった。

「まあ、宗吾落ち着いて座りなさい。マリさんの方がよっぽど落ち着いていてしっかりしている。お前もわかっているだろう。YKコーポレーションとの合併が今の三崎を救う随一の方法だと、そしてその条件がお前とYKの社長令嬢の優美さんとの婚姻だと言う事を…」

三崎社長はゆっくりとでも毅然とした態度で話を続けた。

「お前は取締役専務なんだ。会社を何百という社員を救う義務がある。創業一族の直系の跡取りなんだ。好きな人と添わせてやれないことは本当にすまないと思っている。でも、三崎を潰すわけにはいかないんだ。この通りだ。どうかわかって欲しい」

そういって社長、三崎さんのお父様は息子に頭を下げた。

宗吾は俯いて何も言えないただ膝で握りしめた手にぽたぽたと涙がこぼれていた。

「わかりました。三崎さん私の事はいいんです。この間のお返事未だしていなかったですよね。あの話はなかったことにしましょう。三崎さんは誠実な方です。相手の方を大切に素敵な家庭を作ってくださいね」

そういうと、マリは立ち上がって社長に背筋を伸ばしてきれいなお辞儀をして出て行こうとした。

その手を三崎が掴む、マリはその手をそっと外してドアを開けて出て行った。

その背後で男泣きする三崎の嗚咽する声を聴いてマリも思わず涙を流した。

彼を愛していたわけではない。

ただ、この先の人生を誠実な三崎と歩むのもいいと思い始めたのも事実なのだ。

三崎となら穏やかにお互いを想い合って静かに暮らせるかも知れないと思っていた。

でもなぜかゆみという女性にいつもマリの幸せは摘み取られてしまう運命らしい。