記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

そういうと、マリは青い瞳から静かに涙を流した。

三崎は持っていたハンカチをマリの目に当てて涙を拭いてくれた。

「こんな時に言うのは卑怯かもしれないが、マリさんがずっと好きだったんです。彼を忘れる為でもいい僕と結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」

マリは薄々三崎の好意には気付いていたのだが、まさか結婚を前提にと言われるとは思っていなかった。

「三崎さん、私は三崎さんと結婚できるような身の上ではないんですよ。養護施設にいて高校までしか出ていませんし、三崎さんのお家のような所には不釣り合いです」

「父親に必ず了承をもらう自信はあるんです。この年まで結婚しない跡取り息子に業を煮やしているんですよ。僕の見初めた人なら反対はしませんよ。ただ今まで何も言わなかったのは歳が8歳も離れているので、マリさんにしたらおじさんのようなものですよね」

三崎は馬に乗って鍛錬しているので体も筋肉質で引き締まっている。

顔も、きりっとした男らしい顔をしている。

イケメンというより男前と言った方が似合う日本男子的な正統派のハンサムだ。

「歳の差なんかは気にしませんが、今は彼を忘れる為に前を向くように自分を叱咤するのに必死です。気が緩むとすぐに泣いてしまうんです。彼とは養護施設からずっと一緒だったんです。記憶喪失になんかならなければ今頃結婚して子供がいたかもしれません。彼と築き上げた長い年月から抜け出せるのかどうかもわからないんです」

「待っていますよ。そしてこれからは積極的にアプローチしてマリさんにOK貰えるように頑張ります」

そう言うとマリの手を取って目を覗き込んで

「早速なんですが、来週東京競馬場のレースに三崎グループの馬が出るんですよ。一緒に見に行きませんか?マリさんが応援してくれればきっといい成績残しますよ。僕のビーナスですから、因みにその日は仕事はオフだと貝原さんに確認済です」

「ええっ、三崎さん根回しが良すぎです。断る選択肢はないじゃないですか」

そういうとマリは大らかに笑った。

少し気持ちが晴れたように感じて三崎に感謝する。

「競馬って初めてなんですが馬が走っているのってきれいでしょうね。楽しみになってきました」

「それはよかった。来週の土曜日なんですが、10時ごろ迎えに行きます。馬にも会ってやってください。出走前に少し会えるんです。出走は午後一の時間ですが、早めに行って馬を激励したくて今度のレースが実は初めてのレースなんです。新馬戦なんです」

「そうなんですか?じゃあ馬も緊張してますよね。名前は何というんですか?」

「僕がつけたんですが、ビーナスと言います。メスの2歳です」

「ビーナス?それは絶対応援しなくては」

「ははは、ありがたい。ビーナスも喜びますよ。青い瞳ではないですが、黒い瞳のビーナスです」

マリはちょっと三崎に押され気味になっている感じはするが、でも馬主と一緒に見れるなんて光栄だ。

その後、レオンに乗ってクラブまで帰った。

マリの気持ちは来た時よりもずっと軽くなっていた。

レオンと三崎のお陰だと感謝する。