記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

その日あった出来事を報告し合って近所の人のうわさ話をしたり三人で笑いが絶えない楽しい時間だ。

ケンは仲のいい家族の一員になったようで、胸が温かくなる。

働くようになって恵子に給料のすべてを渡している。

そこからお小遣いとして、8万も返してくれる。

でもこの辺では使い道がない。

朝食と夕食は恵子が作ってくれるし、昼は港で乗組員皆で食事をとる。

普段着を買ったり時々裕美の幼馴染の青年の泰樹に誘われてスナックに飲みにいくくらいだ。

名前も身分を証明できるものも何もないので銀行に口座も作れない。

ケンはほとんど使わず余ったお小遣いを蓋のある入れ物に無造作に突っ込んでおくのだが、半年もすると30万ほどになっていた。

裕美が時々映画が見たいとか服が買いたいとかいうので、付き合って裕美の運転で隣町に行く。

裕美の服を買ってやったり出かけた時にレストランで食事をするぐらいしか使い道はなかった。

そこらのレストランの食事より恵子さんの作る食事の方が断然に美味しかった。

そういうと恵子さんは嬉しそうに笑っている。ケンはとりあえず行動範囲が狭い。

まだ、自分が何者か思い出せずにいるのであまり大きな町に行くのは恐怖があるのだ。

もう何も思い出せなくてもいいかもと思ってしまう。

ここでの生活が楽でゆったりとした時間が過ぎていくのが心地いい。

それに毎日海を見て、潮の匂いを嗅ぎながら生活するのがリラックスできて気持ちいいと感じるようになったのだ。

ただ時々夢で見る顔が見えない女性の悲しそうな声が聞こえる。

なんと言っているかはわからないのだが悲しそうで切なそうな声が、ケンを当惑させる。

彼女はきっと俺の記憶の中にいる人だろうから、彼女に会いたいとは思う。