記憶を無くしたイケメン弁護士は運命のビーナスを取り戻せるか!

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ユキことケンは、仕事の内容を説明してもらっていたので、簡単な力仕事だと思っていたのだ。

漁をなめていたと、最初に漁に出て思い知った。

明け方に出航して魚場に仕掛けてある網を楊網機を使って引き揚げて網に入った魚を船に取り込んで魚倉に入れていく。

そうして新しい網を張って港に帰るのだ。

説明するとそれだけの事なのだが、漁は本当に体力がいる仕事なのだ。

ケンは最初の1週間は筋肉痛と体力のなさで昼すぎに帰ってきた後はへたばっていた。

それではいけないと思って夕方から浜をジョギングし始め筋力トレーニングも自分で考えてやるようになった。

おかげで1カ月もすると皆の邪魔にはならずに役に立つようになっていった。

他の乗組員からロープの結び方や敗れた網の手直しの仕方も教えてもらって、漁を楽しんでいた。

ロープの結び方はもやい結びが漁では一番使われる。

乗組員でロープの結び方に凝っている人がいて、エイトノットやリバーノットという結び方も教えてもらった。

しばらくはロープを結んでは解いてを家で繰り返しやっていた。

ケンは自分は一つの事に凝るタイプのようだと思った。

過去の自分が全く分からないのだが、そういう性格を知れるのはちょっと進歩したように思えてうれしかった。

夏の漁は海に出て気持ちのいい日も多いが冬の漁は大変だ。

でも、船から見る日の出はほんとに美しい。

それを見る余裕が出るまでには2月程かかった。

これから新しい一日が始まる希望に満ちた感覚に支配されるような日の出の景色だ。

冬の漁は過酷だ。雪でも雨でも海が荒れていなければ出航する。

風が強くて波が高い日は、海に出られないので港で網の手入れをしたりする。

季節によってとれる魚は違ってくるが、冬の漁の方が金になるとおっちゃんは言っていた。

しかし、冬は時化る日も多くみんな青い顔をして頑張っている。

ケンは案外というか全然船酔いはしなかった。

どんなに船が揺れていても、平気な顔をしているのだ。

おっちゃんはお前は漁師に向いていると言ってがははと笑っている。