暴れる恋情 ~萌ちゃんママは御曹司に激愛されまくりです~

「友人とバーに行った時にたまたま鈴音が数人の派手な男たちを飲んでるのに出くわしたんだ。鈴音は酔っていて俺がいるとは気づかなかったらしい。鈴音の話し声が聞こえた。
『お腹の出た金持ちのおじさんと結婚するくらいなら美形の御曹司と結婚するわ。でもあなた達とは結婚してもこうやって外で会うから安心して』ってね」
 すぐに理解できなかった。鈴音さんという女性はどういうつもりなの?
「鈴音の専属の召使がいて、吐かせたんだ。実は二年くらい前から鈴音はホスト遊びを始めていて、のめりこんでいる。ホスト達と飲み明かして帰らない日も多いらしい」
 私はその鈴音さんという人のことがよく分からなかった。
「じゃあ......鈴音さんは藤堂さんのことが好きじゃない......?」
 藤堂さんは頷いた。
「そうとしか取れないね。俺も結婚後も男遊びをするような女性を伴侶にはしたくない。学生の頃は両親を亡くしてひとりぼっちの鈴音に同情して一時は結婚も考えた。だがこの数年は、どうしても鈴音を幼馴染以上の存在として考えられなかった。その矢先にホスト遊びの事を知って......母がうるさく言うので鈴音と会いはしていたが一緒にいても心がほどけなくてね。さっきも話したように今日、鈴音との結婚をはっきり断ったんだ」
「......鈴音さんはどうしてホテルに部屋なんか取ってたんですか?」
「無理やりでも俺と寝て既成事実を作ろうという魂胆があったみたいだ。それに気づいてその手には乗らなかった。体調が悪いのは演技に見えなかったから部屋に送りはしたけどね。ベッドに横にならせて俺はすぐに君との待ち合わせ場所のロビーに向かったよ」
「そうだったんですか......」
 ひとつひとつ紐解いていけば、確かに理解はできる。男遊びをする割に藤堂さんとの結婚に執着する鈴音さんの気持ちはいくら推測してもわからなかったけど。
 でも、藤堂さんは何もせずにロビーに来てくれていたんだ。
 真奈美に話したら「そんなの嘘かもしれないじゃない」と怒られるだろうか。でも、私は目の前にいる藤堂さんが嘘をついているとは思えなかった。
 私の知っている藤堂さんは外見は綺麗だけど、どこか不器用で一途な人だ。きっと鈴音さんとの結婚解消もこれまでうまく切り出せなかったのだろう。
「君とせっかく恋人同士になったんだ。けじめをつけたくて鈴音と会ったのが裏目に出て......。誤解をさせてしまってすまなかった」
 藤堂さんは私に頭を下げた。
「私......藤堂さんと鈴音さんがホテルの客室に入った後......どうしてもロビーに行けなかったんです」
 藤堂さんが頭をあげて私を見た。
「私の中で鈴音さんへの嫉妬心が爆発して、心の中がぐちゃぐちゃになって......自分でも怖いくらいでした。藤堂さんのことも心の中で何度も責めました。人生でこんなに気持ちが真っ黒になったことがなくてきっとひどい顔をしてるって......だから、藤堂さんに会う気になれなかったんです。そんな自分、見られるのが嫌で」
 私はうつむいたまま喋った。口にするのが怖かった言葉たち。でも言わないと後悔する。
 これからも藤堂さんとは逃げずに向き合いたい。その一心で言葉を紡いだ。
 視線が下にあった私の目は藤堂さんの手が私の手をそっとつかむのを捉えた。
 藤堂さんの手の体温が伝わってきてはっとして顔をあげる。
 するとなんとも言えず切ないような目をした藤堂さんと目があった。
「深雪さん......嫉妬してくれたんだな。こんなときに非常識かもしれないけど、俺はうれしいよ。だって嫉妬って俺を好きだからしてくれたんだろう?」
 私は体温がかっと上がるのを感じた。
「ず、ずるいです藤堂さん、そんなの......!」
 藤堂さんは私をぎゅっと抱きしめた。
「俺は深雪さんのことを百パーセント好きだったけど今百二十パーセント好きになった。
 かわいさ百倍だ」
「も、もう、そんな事言って......」
 なんだかはぐらかされているようで心が落ち着かない。
 でも藤堂さんの身体から伝わってくるぬくもりは本物で、いつまでもこうしていてほしいと思う自分もいた。
 心の中にいろんな自分がいてまとまらない。
「好きなんだ。愛してる。俺が結婚したいと思っているのは君だけだ」
かすれた声で藤堂さんが言う。
 本当に......?
 私も、と簡単に言えなかった。だって私も本当に藤堂さんのことが好きだから。私は言葉にならない思いを込めて頭のてっぺんを藤堂さんの胸に擦りつけた。
「深雪」
 熱のこもった声で初めて呼び捨てにされた。ゆっくり藤堂さんの顔を見られるように自分の顔をあげる。
 視線が絡んだ瞬間に藤堂さんは私の唇を唇で塞いだ。唇を強く押し付けられる。私の口元が緩んだ途端、舌をすべり込ませてきた。あっという間に私の舌を絡めとられる。触れ合う舌先は私の知らない感覚を誘いだした。腰の辺りが熱を持つだけでなく頭の中がぼうっとする。そのくせ私の神経と感覚は藤堂さんのキスに集中していて快感を貪ろうとしている。そんな自分が出てくるなんて驚いてしまうけれど、気持ちはもうキスに持っていかれている。
 長いキスが続いて腰がくだけそうだ。もう半身はすっかり藤堂さんにもたれきっている。
「藤......堂さん」
 なにを言えばいいのかわからず名前を呼んだ。
 はあっ、と藤堂さんが息を吐いた。
「くそ、かわいすぎる深雪......君が欲しい。抱きたい」
 こんなとき、なんて言えばいいんだろう。恋愛小説をあんなにたくさん読んだのに答えが浮かばない。
 私は自分にどうしたい?ときいた。
 藤堂さんとならこの先を知りたい、と直球で返ってきた。
「は、初めてだから優しくして......」
 心の奥にいた臆病な自分がここぞとばかりに顔を出した。
「もちろんだ」
 藤堂さんは私にまたキスをしてそのまま背後にあったベッドへ私を押し倒した。
 男の人に組敷かれるという初めての体験。ぐっと重みを感じるのが抱きしめられるのとは違う。身体中が密着するような錯覚を起こす。
 藤堂さんの手はまず私の胸にむけられた。ゆっくり服の上から胸をもみほぐす。熱のかたまりのような快感が走って短く声をあげる。
 藤堂さんの唇は私の首筋にもキスを降らせた。手は胸から下の方へと降りていった。
 ワンピースの裾から手がはいってくる。太ももを触られるだけでドキドキする。
 足の間が溶けそうなほど熱を持っているのにはさっきから気づいていた。この熱をどうにかしてほしいという気持ちが心根にある。恥ずかしくて言葉にはできない。どうしたら。
 そう思っていたのに藤堂さんは以心伝心したかのようにそこを指で撫でた。
「ああっ」
 高い声が出た。するどい快感が駆けあがってくる。さらにショーツの隙間から指をいれられ私の中をかきまわされる。
 頭を振っていやいやをしてしまう。腰に初めて知る快感の波がどんどん押し寄せてきてたまらない。
「んんっん...」
 声が止まらなくなりそうなので慌てて自分の手で口を塞ぐ。
 どうしよう。こんなの。怖い。どうにかなりそう。
 言葉にならない言葉たちが浮かんでは消える。
 ふっとむずがゆさのようなものを感じていた場所に藤堂さんの指先が触れた。
 目の前で火花が散るような鋭い快感にのけぞる。
「深雪、待って。俺も」
 藤堂さんが声と共に私の中に入ってきてつながったのが分かった。痛みはたしかにあったけれど、いつの間にか静まり快感が送り込まれるようになった。
「あ......や......ああんっ」
 手で口をふさぐのも忘れて藤堂さんとひとつになれた喜びに満たされる。
「深雪......」
 藤堂さんが呻くように私の名前を呼び、腰が早く打ち付けられた。また走り出す快感に声が出てしまう。自分がこんなに乱れるなんて。
 藤堂さんが昇りつめたのが分かった。私の肩の辺りに顔を埋める藤堂さんの頭をそっと抱いた。なんとも言えずいとおしい気持ちが湧き上がった。
 しばらくして藤堂さんが身体を離し、私の隣で仰向けになって言った。
「初めてだったんだよな......きつくなかったか?」
「少し......でも藤堂さんと結ばれて嬉しかった」
「そうか。ならよかった。このまま朝まで眠りたい」
 藤堂さんは私の手に指を絡めた。
「は、い......」
 私はシーツを引き寄せて目をつぶった。藤堂さんの体温が身体の触れた部分から伝わってくる。私はその熱に癒されるように眠りの中に引き込まれていった。
 先に目が覚めたのは私の方だった。
 いつまでも藤堂さんの寝顔を見ていたかったけれどこれから仕事に行かねばならない。気持ちを切り替えて起きて部屋着を着て簡単な朝食を作った。
「藤堂さん、起きてください」
「ん......」
 藤堂さんの寝ぼけ眼が私を捉えると、ぐいっとベッドに引き込まれた。
 仰向けになった藤堂さんの胸に飛び込んだ形になる。
「離したくない」
「だ、ダメです。もう朝食を食べないと仕事に遅れます」
 何度もスケジュール帳を突き合わせたから知っている。午前中の藤堂さんは忙しい。打合せがいくつもある。
「......仕方ない。起きるとするか」
 私の頬にチュッとキスをして、半身を起こした。その後は目にも止まらぬ早さでシャワーを浴びて身支度をし、朝食を食べ始めた。私はその間にシャワーを浴びた。
 洗面所で化粧をしていつもの出勤着に着替えた。
「うん。今日も綺麗だ」
 朝からそんな直球を投げられて、またドキドキしてしまう。
「俺はもう出るよ。深雪はもう少ししてから?」