萌が心配そうな顔をして「ママ、大丈夫?」と言った。私は笑顔を作った。
「大丈夫。ちょっと本音を言っちゃっただけ」
萌はぽかんとして意味がわからないという顔をしていた。それもそうだろう。
「本音か」
沙雪がぽつりと言った。
「深雪が本音を言って熱くなることなんて、滅多にないよね。わかった。東京、一緒に行こう。その岡崎先生とやらを説得するすごいトーク、考えなさいよ。私にできることと言ったら空き時間に萌の世話するくらいかな。でもミドリちゃんもいるしなんとかなるっしょ」
ぐっと胸の内が温かくなった。私の言ったことを尊重してくれる姉がいてよかった。
果たして三日後に東京へ行くことになった。
萌が「保育園休んでいいの?やったー」とはしゃいでいた。
岡崎先生を陥落させるのは大きなハードルだけれど。その前にも越えなくてはいけないハードルがあった。
私は吉永書店の近くにあるコーヒーショップで真奈美と向き合っていた。萌は大人しく隣りでジュースを飲んでいる。真奈美は仕事が終わった後。沙雪はオーディションの日で落ち合うのは二十一時頃の予定だ。
私の目の前の席に座った真奈美は、私と目を合わさず、煙草を一本取り出し吸った。ふーと煙を吐く。
「......煙草、吸うようになったんだ?」
明らかにウエルカムじゃない空気におずおずと私は言った。
「まあね。友達と思ってた奴からいきなり連絡遮断されたから。煙草でも吸わないとやってらんなくなった」
ごくり、と私は息を飲んだ。真奈美には退職の話だけして連絡を絶ってしまった。私の身勝手さを許せなくても仕方がない。当然だと思う。
「ごめん。あのときは、真奈美と連絡を取ってたらどうしても藤堂さんとつながるんじゃないかって心配で。私、すぐに藤堂さんに見つかるわけにはいかなかったの。それで」
「ひどいよ」
ぎり、と真奈美は私を見据えた。
「どういう事情があったか知らないけど。あんたは友達を切ったんだよ。こっちはいらないって言われたのと一緒。深雪にとってあたしってそんな簡単な存在だったんだね。めっちゃ傷ついたよ」
「ご、ごめん」
続ける言葉も思いつかず、ただそれだけを言った。
「ママ、いじめられてるの?」
萌がジュースを飲み終わって首をかしげてこちらを見た。
「ううん。ちょっと言い合いになってるだけ。ちゃんと話したらわかってもらえると思う」
「出産しましたの葉書くらいくれればよかったじゃん!......ったく」
「友達だから!」
つい声が大きくなってしまう。
「友達だから言えなかったんだよ。離れるのがつらくて福岡に行く決心が鈍るから言えなかったの。冷静で行動力のある真奈美に東京で何とか解決しようって言われそうな気がして......でもそれは無理で......真奈美に言われたら揺れちゃうからそれで」
自分の目じりにじわ、と涙が滲んだ。東京を離れてひとりで子どもを産む。その大きすぎる決断をするためには秘密裏にすすめていく流れがどうしても必要だった。
「...あたしが、福岡行きを止めると思った?」
声のトーンを落として真奈美が言った。
「思った。絶対行くなって言われると思った」
「ちぇっ、そうだよ。だって深雪といたかったもん......でももうちょっと早く......あー!もういいや!今日は私になんか用があったんでしょ!」
真奈美に本当にごめん、と呟いてから口を開いた。
「うん。真奈美の叔母さんで『ニコチャンマン』の作家である岡崎まさこ先生に会わせてほしいの」
「まさこ叔母さんに?」
「うん。シマリス、副社長が逮捕されちゃってピンチでしょう。今、岡崎先生にシマリスで『ニコチャン』書くのやめられたら大打撃なの。なんとかして岡崎先生に思い直してほしくて。会ってシマリスで執筆を続けてもらうようお願いしたいの。私の力なんてちっぽけだろうけど......あき......藤堂さんのためにできることってこのくらいしかないから」
真奈美は当惑した表情をしていた。
「えっと...え、待ってもしかして、この萌ちゃんってじゃあ」
「そう......あの時、言えなかったけど、この子は藤堂さんの子なの。ここを離れたのは妊娠してひとりで産もうって決めたからなんだ」
「どうして?だって藤堂さん、あんなに深雪のこと大事に思ってたじゃない。ここにも何度も探しにきたよ。どうしてひとりで産むことにしたの?」
私は目を伏せた。できるだけ藤堂のお母様の思惑は口に出さないようにしてきたけれど、お願いをするのにこちらに隠し事があるのはムシが良すぎるというものだろう。
私は包み隠さず、お母様の話をして私が子どもを産み育てる決心をするに至った話をした。
真奈美は私の話を聞き終えると、椅子の背にもたれかかり脱力した。
「はあ......すさまじい女の情念っていうか......なるほどね。うん、まあ百パーセント深雪の言うことに同意できるわけじゃないけど、まあ事の次第はわかったよ」
「ありがとう。ごめん。自分勝手なのはわかってるんだ。真奈美に迷惑かけちゃうかもしれないけど、ツテは他になくて......」
真奈美は吸っていた煙草を灰皿でぎゅっと消した。そして萌に向き直った。
「ねえ、萌ちゃん、ママ優しい?」
萌は持ってきていたお絵描き帳に絵を描いていたが真奈美の言葉に顔をあげた。
「うん、やさしーよー」
「そっか。じゃあ萌ちゃんに免じて許してやる深雪。叔母さん仕事が落ち着いてるって言ってたから連絡とってあげる」
「あ、ありがとう......!」
闇にぱっと光が差し込んできたみたいだった。手前勝手な言い分を受け入れてくれた。感謝しかない。
「そのかわり」
ぎろっと、真奈美が私をにらむ。
「これからマメに萌ちゃんのかわいい写真とかラインすること。いいね?!」
「真奈美......」
胸の内が温かくなった。萌が「ママ、どうして泣いてるのー」と不思議そうにしていた。
ベビーカーをタクシーの運転手さんに下ろしてもらった。到着したのは古いレンガの壁に囲まれた洋館の前だった。クラシックな造りだが、見ただけでは部屋数がぱっと分らない豪邸だ。壁には蔦が伸びていてなんだか絵本に描かれているお屋敷にたどり着いたような気持ちにさせられた。
さすが児童書のヒットメーカーの邸宅。想像の斜め上をいっている。
ベビーカーを押して玄関のチャイムを押す。萌はタクシーの中で眠かったらしくベビーカーで寝息を立てている。
玄関に初老のエプロンを着けた女性が出てきた。家政婦さんのようだ。
「こんにちわ。私、真奈美さんの友人です。今日、岡崎先生とお会いできることになっていて伺ったのですが」
「はい。お話は伺っております。どうぞおあがりください」
眠っている萌を抱っこして、ベビーカーは玄関に置かせてもらった。つややかなフローリングの廊下を歩く。窓ガラスが大きく取ってあり、お庭が見えた。手入れされているのだろう、綺麗なバラが咲いている。
「奥様。真奈美さんのご友人の方が」
廊下の奥の部屋のドアを開けて家政婦さんが言った。
「ああ。はい。通して」
声はしたけれど姿は見えなかった。何故なら床から本が何列も積みあがっていて、部屋のあちこちに本の塔ができている。特に机があるらしい場所の近くはもう本の壁、と言ってよかった。
本の壁の後ろから手がひらひらと揺れた。
「こっちに」
そうっと本の塔を崩さないように歩いていくと、ぽかっと本のない空間が現れ、そこにパソコンとノート類が並んだ机があり、六十代くらいの女性がいた。女性は髪の毛が長く、黒のVネックのTシャツに黒のパンツを合わせていた。ほっそりしていて実年齢よりも若く見えるじゃないかと思う。これが岡崎まさこ先生。
「あら、お子さん?」
はい、と私が萌を抱え直すと萌がむにゃ、と起きだした。寝起きは悪くないので大丈夫と思うけれど。足をばたつかせるので立ちたいらしい。抱っこを下ろすと、岡崎先生を見てきょとん、とした。
「おばちゃん、だあれ?」
「うーん、そうね。ニコチャンマンのお母さんかな」
「ええっ」
萌はもちろん『ニコチャンマン』が大好きだ。まず赤ちゃんが『ニコチャン』を通らずにいられるのは難しいというくらい、国民的な絵本だ。萌はその『ニコチャン』のお母さんと言われて混乱している。
「ほ、ほんとう?」
目をキラキラさせて萌が先生をじっと見つめる。
「本当だよ。じゃあさ、証拠に今、ニコチャン描いてあげるよ」
「えっ」
これには私が声をあげた。そんなに軽々しく大先生に絵を描いてもらっていいのだろうか。いや、よくない。私は慌てた。
「せ、先生。それは贅沢すぎます。この子にそんな」
「いいの、いいの。意外と読者さんと会えないから。こういうときくらいね」
と言いながら、すらすらスケッチブックに『ニコチャンマン』を描いてくれる。
「できた。どうかなー」
萌の目の前にひらっと『ニコチャンマン』の絵を差し出される。
「しゅごいっ!ニコチャンマンだあ」
萌は大喜びしてぴょんぴょん跳ねた。すごいニコチャンパワー。こんなに喜ぶことなんて滅多にない。
「喜んでもらえてよかったわ。それで、私に話があるんだって?」
「は、はい。あの娘だけじゃなくて私も子供の頃、ニコチャンマンを読んでました。その頃からずっと好きで楽しませてもらっていて。娘にも最初に買ってあげたのはニコチャンの『怪獣どろぼう』で」
ああ、と先生は手を振った。
「そういうのはいいから。そんなのはファンレターで事足りるでしょう。わざわざ会いたかったのはどうして?」
「大丈夫。ちょっと本音を言っちゃっただけ」
萌はぽかんとして意味がわからないという顔をしていた。それもそうだろう。
「本音か」
沙雪がぽつりと言った。
「深雪が本音を言って熱くなることなんて、滅多にないよね。わかった。東京、一緒に行こう。その岡崎先生とやらを説得するすごいトーク、考えなさいよ。私にできることと言ったら空き時間に萌の世話するくらいかな。でもミドリちゃんもいるしなんとかなるっしょ」
ぐっと胸の内が温かくなった。私の言ったことを尊重してくれる姉がいてよかった。
果たして三日後に東京へ行くことになった。
萌が「保育園休んでいいの?やったー」とはしゃいでいた。
岡崎先生を陥落させるのは大きなハードルだけれど。その前にも越えなくてはいけないハードルがあった。
私は吉永書店の近くにあるコーヒーショップで真奈美と向き合っていた。萌は大人しく隣りでジュースを飲んでいる。真奈美は仕事が終わった後。沙雪はオーディションの日で落ち合うのは二十一時頃の予定だ。
私の目の前の席に座った真奈美は、私と目を合わさず、煙草を一本取り出し吸った。ふーと煙を吐く。
「......煙草、吸うようになったんだ?」
明らかにウエルカムじゃない空気におずおずと私は言った。
「まあね。友達と思ってた奴からいきなり連絡遮断されたから。煙草でも吸わないとやってらんなくなった」
ごくり、と私は息を飲んだ。真奈美には退職の話だけして連絡を絶ってしまった。私の身勝手さを許せなくても仕方がない。当然だと思う。
「ごめん。あのときは、真奈美と連絡を取ってたらどうしても藤堂さんとつながるんじゃないかって心配で。私、すぐに藤堂さんに見つかるわけにはいかなかったの。それで」
「ひどいよ」
ぎり、と真奈美は私を見据えた。
「どういう事情があったか知らないけど。あんたは友達を切ったんだよ。こっちはいらないって言われたのと一緒。深雪にとってあたしってそんな簡単な存在だったんだね。めっちゃ傷ついたよ」
「ご、ごめん」
続ける言葉も思いつかず、ただそれだけを言った。
「ママ、いじめられてるの?」
萌がジュースを飲み終わって首をかしげてこちらを見た。
「ううん。ちょっと言い合いになってるだけ。ちゃんと話したらわかってもらえると思う」
「出産しましたの葉書くらいくれればよかったじゃん!......ったく」
「友達だから!」
つい声が大きくなってしまう。
「友達だから言えなかったんだよ。離れるのがつらくて福岡に行く決心が鈍るから言えなかったの。冷静で行動力のある真奈美に東京で何とか解決しようって言われそうな気がして......でもそれは無理で......真奈美に言われたら揺れちゃうからそれで」
自分の目じりにじわ、と涙が滲んだ。東京を離れてひとりで子どもを産む。その大きすぎる決断をするためには秘密裏にすすめていく流れがどうしても必要だった。
「...あたしが、福岡行きを止めると思った?」
声のトーンを落として真奈美が言った。
「思った。絶対行くなって言われると思った」
「ちぇっ、そうだよ。だって深雪といたかったもん......でももうちょっと早く......あー!もういいや!今日は私になんか用があったんでしょ!」
真奈美に本当にごめん、と呟いてから口を開いた。
「うん。真奈美の叔母さんで『ニコチャンマン』の作家である岡崎まさこ先生に会わせてほしいの」
「まさこ叔母さんに?」
「うん。シマリス、副社長が逮捕されちゃってピンチでしょう。今、岡崎先生にシマリスで『ニコチャン』書くのやめられたら大打撃なの。なんとかして岡崎先生に思い直してほしくて。会ってシマリスで執筆を続けてもらうようお願いしたいの。私の力なんてちっぽけだろうけど......あき......藤堂さんのためにできることってこのくらいしかないから」
真奈美は当惑した表情をしていた。
「えっと...え、待ってもしかして、この萌ちゃんってじゃあ」
「そう......あの時、言えなかったけど、この子は藤堂さんの子なの。ここを離れたのは妊娠してひとりで産もうって決めたからなんだ」
「どうして?だって藤堂さん、あんなに深雪のこと大事に思ってたじゃない。ここにも何度も探しにきたよ。どうしてひとりで産むことにしたの?」
私は目を伏せた。できるだけ藤堂のお母様の思惑は口に出さないようにしてきたけれど、お願いをするのにこちらに隠し事があるのはムシが良すぎるというものだろう。
私は包み隠さず、お母様の話をして私が子どもを産み育てる決心をするに至った話をした。
真奈美は私の話を聞き終えると、椅子の背にもたれかかり脱力した。
「はあ......すさまじい女の情念っていうか......なるほどね。うん、まあ百パーセント深雪の言うことに同意できるわけじゃないけど、まあ事の次第はわかったよ」
「ありがとう。ごめん。自分勝手なのはわかってるんだ。真奈美に迷惑かけちゃうかもしれないけど、ツテは他になくて......」
真奈美は吸っていた煙草を灰皿でぎゅっと消した。そして萌に向き直った。
「ねえ、萌ちゃん、ママ優しい?」
萌は持ってきていたお絵描き帳に絵を描いていたが真奈美の言葉に顔をあげた。
「うん、やさしーよー」
「そっか。じゃあ萌ちゃんに免じて許してやる深雪。叔母さん仕事が落ち着いてるって言ってたから連絡とってあげる」
「あ、ありがとう......!」
闇にぱっと光が差し込んできたみたいだった。手前勝手な言い分を受け入れてくれた。感謝しかない。
「そのかわり」
ぎろっと、真奈美が私をにらむ。
「これからマメに萌ちゃんのかわいい写真とかラインすること。いいね?!」
「真奈美......」
胸の内が温かくなった。萌が「ママ、どうして泣いてるのー」と不思議そうにしていた。
ベビーカーをタクシーの運転手さんに下ろしてもらった。到着したのは古いレンガの壁に囲まれた洋館の前だった。クラシックな造りだが、見ただけでは部屋数がぱっと分らない豪邸だ。壁には蔦が伸びていてなんだか絵本に描かれているお屋敷にたどり着いたような気持ちにさせられた。
さすが児童書のヒットメーカーの邸宅。想像の斜め上をいっている。
ベビーカーを押して玄関のチャイムを押す。萌はタクシーの中で眠かったらしくベビーカーで寝息を立てている。
玄関に初老のエプロンを着けた女性が出てきた。家政婦さんのようだ。
「こんにちわ。私、真奈美さんの友人です。今日、岡崎先生とお会いできることになっていて伺ったのですが」
「はい。お話は伺っております。どうぞおあがりください」
眠っている萌を抱っこして、ベビーカーは玄関に置かせてもらった。つややかなフローリングの廊下を歩く。窓ガラスが大きく取ってあり、お庭が見えた。手入れされているのだろう、綺麗なバラが咲いている。
「奥様。真奈美さんのご友人の方が」
廊下の奥の部屋のドアを開けて家政婦さんが言った。
「ああ。はい。通して」
声はしたけれど姿は見えなかった。何故なら床から本が何列も積みあがっていて、部屋のあちこちに本の塔ができている。特に机があるらしい場所の近くはもう本の壁、と言ってよかった。
本の壁の後ろから手がひらひらと揺れた。
「こっちに」
そうっと本の塔を崩さないように歩いていくと、ぽかっと本のない空間が現れ、そこにパソコンとノート類が並んだ机があり、六十代くらいの女性がいた。女性は髪の毛が長く、黒のVネックのTシャツに黒のパンツを合わせていた。ほっそりしていて実年齢よりも若く見えるじゃないかと思う。これが岡崎まさこ先生。
「あら、お子さん?」
はい、と私が萌を抱え直すと萌がむにゃ、と起きだした。寝起きは悪くないので大丈夫と思うけれど。足をばたつかせるので立ちたいらしい。抱っこを下ろすと、岡崎先生を見てきょとん、とした。
「おばちゃん、だあれ?」
「うーん、そうね。ニコチャンマンのお母さんかな」
「ええっ」
萌はもちろん『ニコチャンマン』が大好きだ。まず赤ちゃんが『ニコチャン』を通らずにいられるのは難しいというくらい、国民的な絵本だ。萌はその『ニコチャン』のお母さんと言われて混乱している。
「ほ、ほんとう?」
目をキラキラさせて萌が先生をじっと見つめる。
「本当だよ。じゃあさ、証拠に今、ニコチャン描いてあげるよ」
「えっ」
これには私が声をあげた。そんなに軽々しく大先生に絵を描いてもらっていいのだろうか。いや、よくない。私は慌てた。
「せ、先生。それは贅沢すぎます。この子にそんな」
「いいの、いいの。意外と読者さんと会えないから。こういうときくらいね」
と言いながら、すらすらスケッチブックに『ニコチャンマン』を描いてくれる。
「できた。どうかなー」
萌の目の前にひらっと『ニコチャンマン』の絵を差し出される。
「しゅごいっ!ニコチャンマンだあ」
萌は大喜びしてぴょんぴょん跳ねた。すごいニコチャンパワー。こんなに喜ぶことなんて滅多にない。
「喜んでもらえてよかったわ。それで、私に話があるんだって?」
「は、はい。あの娘だけじゃなくて私も子供の頃、ニコチャンマンを読んでました。その頃からずっと好きで楽しませてもらっていて。娘にも最初に買ってあげたのはニコチャンの『怪獣どろぼう』で」
ああ、と先生は手を振った。
「そういうのはいいから。そんなのはファンレターで事足りるでしょう。わざわざ会いたかったのはどうして?」



