そして、500キロ離れたキミと手を繋ぐ

 固まった彼の頭上を見れば「リック」と書いてある。
 彼のプレイヤー名はリックらしい。
 さすがに本名そのままではなさそうだ。

 りっくんと限りなく響きが似ているがそのことを考えたら動揺してしまうので考えない。考えないったら考えない。

「……ぷ、プレイヤーの方だったんですね。ええと、今あの巨人が町を襲ってますけど、これは不具合だと思います」

 断言するような、人に落ち着きを与える喋り方だった。
 やっぱり町破壊を新要素として出したかったわけではなく、意図しないバグのせいでこうなっているらしい。

「巨人と似たような敵は今までEFO(エフォ)に居ませんでしたし、HPバーも見えないですが、()()()はあの巨人を倒すつもりです」

 私たち?
 疑問に思って巨人の方を見ると、巨人の足元にはそれなりの数のプレイヤーがいた。

 巨人の身体が大きすぎて私にこぶしが届きそうだったものの、巨人のいる位置とここはそれなりに距離があった。

「次は庇えない可能性もありますので、どうかお気をつけて」

 こくりと頷く。

 倒す。
 それができるならそれに越したことはないと思う。
 討伐の邪魔はしたくなかった。

 私は4箇所を巡って結界を張り続けようとしているけれど、魔力切れや、時間切れがある。

 どんなに長く見積もっても、夕ご飯のために19時にはログアウトしなきゃいけない。
 3時間以上あの巨人が元気いっぱいに町を攻撃してきたら?
 そう考えると、だいぶ怖い。

 ――そんなことを思いながら歌っていたせいか、はたまたさっきの動揺が原因か。
 リックさんの背を見送っている最中に魔法陣が完成したけれど、できたのはドーム状の結界ではなかった。