そして、500キロ離れたキミと手を繋ぐ

 その姿を見た瞬間、口が勝手に動きかけて、そんな自分にも動揺する。

 今、私、あの人を「りっくん」と呼ぼうとした――?

 落ち着け私。
 動揺してはいけない。声色を変えてはいけない。
 もう手遅れかもしれないけれど、もし効果が変わってしまうとしても、歌を止めることだけはダメだ。

 このことを考え続けたら絶対に動揺しちゃうのはわかりきっている。
 私は無理やり思考を切り替えた。

 どうしてあの人は割り込んできたのだろう。

 動きが速すぎて読めないけど、頭の上に名前が浮いていることはわかるから、あの人はプレイヤーだ。私と同じく、あのこぶしが原因で本当に死ぬことはない。

 だけど、死亡状態になって死亡ペナルティを受けてしまう可能性はあるのに。

 そう思っていたら、彼の剣が巨大なこぶしに小さく傷をつけ、
 すると振りかぶられていたこぶしが嘘のように止まった。
 そして、後ろに引いていく。

 一旦は助かったらしい。
 が、まだ魔法陣が完成するまでは時間がかかりそうだ。

「すみません! すぐ倒せそうにないのでこのまま逃げていただければと――」

 そこまで言った彼は、口が忙しくて話せない私の方を振り返り、そのまま一瞬固まった。