そして、500キロ離れたキミと手を繋ぐ

「ちょっとごめん!」

 光のような速さで私の異常に気づいたりっくんは、そう叫ぶように断って、私を抱えて駆け出した。反射的に私も服にしがみつくけど……もしかしなくてもお姫様抱っこ!?

 私が動揺してしまったせいで迷惑をかけてしまっているから申し訳なく思うべきなのに、能力差によって自力では不可能な速さで景色が流れていくから、楽しいなんて思ってしまう。

 りっくんが本気を出すと誰も追ってこられない速度みたいで、人気(ひとけ)のない木陰で私を下ろす。

「え……?」

 困惑しながらりっくんを見上げると、私を安心させるためかうっすら笑みを浮かべていた。

「ちょっと目を閉じて耳をふさいで待っててよ。モモには指一本触れさせないから」

 パーティを組む前提のイベントで、1人で全部なんとかするなんて、そんなことができるのだろうか。いやできてたまるか。

 なのに、りっくんの表情を見ていると不安など微塵もわかない。
 たしかにりっくんには何度かPKが怖いという話もしていて、その度に、誘った責任を取る!みたいな顔で「大丈夫、モモには指一本触れさせない」と言ってくれた。

 でも!

 でも!!

 いくら1人でなんとかできそうだとしても。
 りっくんに任せて何もしなかったら、このイベントを楽しめたと言えるの?

 りっくんは私を安全地帯に置いて1人でなんとかするために、私をイベントに誘ったの?

 駆けていくりっくんの背中を見ながら息を吸う。
 どんな歌がいいか、と一瞬悩んで、私は笑みを浮かべた。