そして、500キロ離れたキミと手を繋ぐ

 このステータス2倍の歌を歌った理由は他にもある。
 リックさんが強いと分かったから。
 ステータス2倍は、強い人ほど効果の大きい歌だからだ。

 ステータスとは、能力を示す値のこと。

 いくら現実そっくりでも、これはゲームで、何もかもが内部的には数値で処理されている。具体的な数値はわからないけれど、大まかにはわかる。

 例えば、パンチを1回喰らった時のHP(エイチピー)バーの減少幅は、敵によって違う。
 新しくゲームを始めて10分もかからず出会えるちっちゃな犬っぽい魔物に殴られても、HPは減ったかどうかわからないくらいだ。けれど、今ここで暴れている巨人の大きなこぶしに殴られたら、HPは全損して死亡状態になるだろう。
 それは敵に設定された「攻撃力」が違うから。

 逆に、と言うと変だけど、防御力の高い鎧を着込んだ人なら、もしかしたら巨人のこぶしに当たってもそこまでHPは削れないかもしれない。

 ここまで連呼している「HP」とは、どれくらいダメージを受けたら死亡状態になるかを意味する「ヒットポイント」のことだ。残りHP/最大HPを示すバーは、誰の視界にもずっと表示されている。敵でも味方でも、あとどれだけで死ぬのか大まかにはわかる。
 自分にしか見えないものの、残り魔力量/最大魔力量もバーで確認できる。

 一人一人違う能力の値がぜんぶステータス。
 そのうち、バーで表示される2つを除いた、攻撃力や防御力などがぜんぶ2倍になる。

 元の数値が大きければ大きいほど、倍になったときの恩恵は大きい。
 1を2倍しても1増えるだけだけど、1万を2倍したら1万増える。

 素の状態で巨人のこぶしを防げるほどに強いリックさん。
 私が攻撃に回るより、彼を強化した方が勝率は高い。そういう確信があった。

 歌ひとつで、彼ひとりだけでなく巨人の足元で戦うみんなが強化されるなら、なおさらだ。