「あ」
「兄ちゃん、どーしたの?」
「いや、なんでもない」
なんでもない、いつも通りの日常の中。
家で春弥が見ているテレビを視界に入れた俺は、とある人物の姿を見つけていた。
他人と言うには近いけど、友だちとは絶対に言わない関係の。
「兄ちゃんの学校に星谷 楓茉いるんでしょ?」
「あぁ」
「すごいよな!こんなにテレビに出てる人と同じ学校とか!」
ひとりではしゃいでいる春弥はとりあえず置いとく。
同じ学校の先輩であり、俳優の星谷 楓茉。
その人は、俺の絶対に叶わない片想いの相手、桜庭さんの彼氏でもある。
「春弥、前から知ってたっけ」
「いや?最近、いろいろ出てるから覚えた!」
「そう」
まあ確かに最近、星谷先輩はメディアへの露出が多い。
ということはつまり、仕事が忙しいってこと。
あの先輩ならなんとかしそうだけど、桜庭さんとあんま会えてないんじゃない?
俺に言った言葉、忘れてないよな?
"まぁ、悲しませる気も、他のやつに渡す気もないけど"
"当たり前だよ。何があっても大切にする"
真剣な目でこう言った先輩だから、俺は諦めたんだよ。
桜庭さんを幸せにできるのは先輩だと思って。



