こっちを向いて、ヴェルランド。

リーリエは、両手を挙げると何とか男に懇願する。

「お、お願いです。外は見ての通り大雨です!今外に出ては体が冷えて風邪を引いてしまいます!」

「貴様の事情など知ったことではない。そもそも、村に卵を買いに行く力があるのなら、そう問題はない筈だが?」

「そ、それは…」

リーリエは口籠る。確かに大雨の中卵欲しさに外へと出たのは紛れもない事実だ。

「えっと…、それは…、その…そうかもしれませんが、私は昨日雨が止んだらここを早急に出ていくと申し上げました。ですが、ご覧の通り雨は昨日から降り続けたままです!」

わかりやすく、言い訳するリーリエの姿に男は小さく溜息を吐く。

「…全く。厄介な女を拾ったものだ」

男は独り言のようにそう吐き捨てると、興醒めした様子で銃を下す。

「雨が止んだら出ていくのだな?」

「え、えぇ。もちろん」

リーリエは力強く頷く。すると、男は少し疲れた様子で一枚の紙切れをテーブルへと置いた。

「食料が欲しいなら、定期的に屋敷へ来る配送サービスを使え…。特に食品は村では買うな。また、不良品を掴まされる可能性があるからな…」

男はそう言い残すと、黒いマントを翻して調理場を出て行った。しかし、リーリエはそんな男の背中に声をかける。

「黒マントさん!お待ちください!」

黒マントという呼び方に、男は一瞬顔を顰めるも静かにその場に立ち止まる。

「何だ…」

「あの、ありがとうございます!私、リーリエ・ギモーヴと申します。このご恩は決して忘れません…」

リーリエは素直に感謝を述べると男に向かって深々と頭を下げる。すると男は再び黒いマントを翻し耳障りの良い声でこう言った。


「ヴェルランド・ヴァイスハイトだ…」