「もう戻る必要はない」
そう言われて、リーリエは思わず小箱に入った神官者の筆を落としそうになる。
「ま、まぁ、ダンゼル…、何故貴方がここに?」
振り向くと、そこにはダンゼルが立っていた。
先程まで遠方の砂漠地帯にいたはずの相手に、リーリエの顔が恐怖に染まる。
「何故?」
ダンゼルは不気味に微笑むと、リーリエが持つ小箱を掴んだ。
「では、私も尋ねよう。何故、お前がこれを持っている。この箱はあの金庫に保管しておいたはずだが?」
「こ、これは…、その…」
その反応にダンゼルはリーリエから小箱を取り上げようとする。
「ダ、ダメ!」
「これは私の私物だ、勝手に触るなど言語道断!返せ!」
「い、いや!!」
リーリエは何がなんでも、箱を取られまいと必死に抵抗する。
「やめて!」
「この小娘!!殺されたいのか!」
「いや!!」
ダンゼルの物凄い力にリーリエは一瞬怯むも、何者かの力によって何とか持ち堪える。
「いい加減に!!!」
ダンゼルが魔法を唱えようとしたその時ー、
「リーリエ!!!!頭を伏せろ!!」
ヴェルランドの大きな声が屋敷内に響き渡った。
リーリエはその言葉に咄嗟に頭を伏せると、僅か数センチ頭上に弾がめり込む音が響いた。
突然の出来事にリーリエは思わず箱から手を離してしまう。
ヴェルランドはその後も何発かダンゼルに弾を打ち込むと、耳を塞いで座り込むリーリエの側へと駆け寄った。
「リーリエ!」
「ヴェルランド!」
二人は束の間の再会を喜ぶと、リーリエはハッと何かに気づいたかのようにその場に立ち上がる。
「箱が!」
「箱?」
慌てふためきながら辺りを探すリーリエに、ヴェルランドも辺りを見渡す。
「箱が!、箱の中に、筆が!!」
ヴェルランドはその言葉に、全ての事を理解すると同じように箱を探す。
「あそこだ!」
数メートル離れた場所に転がった小箱を発見したヴェルランドは急いで小箱を取ろうとする。しかし、その動きは後一歩の所でダンゼルに阻まれてしまった。
「ぐっ!」
魔法をかけられたヴェルランドはその場に倒れ込むと、苦しそうに唸り声を上げる。
「ヴェルランド!!」
「動くな!!」
ダンゼルの怒鳴り声にリーリエはその場に固まると、恐る恐るダンゼルを見つめた。
「全く。どいつもこいつも、目障りだ…」
ダンゼルはゆっくりとした動作で小箱を拾い上げると、何か閃いたかのように箱から筆を取り出す。
「そうだ…。目障りなら封印してしまえばいい。ちょうど、ここには本があるようだしな…」
ダンゼルはヴェルランドから封印の書を取り上げると、唾をつけてページをペラペラと捲り始める。
「確か…、重罪人は最後の方のページだったな…。」
ダンゼルは一つのページに辿り着くと、今度は至極嬉しそうに微笑んだ。
「さて、リーリエ。ここで一つ取引をしようじゃないか…」
「と、取引…?」
「お前が今後、死ぬまで私に忠誠を誓うというのならこの男は我が屋敷の牢に繋ぎ止めるに留めよう」
「嫌だといったら?」
「この男は永遠にこの本の中だ…」
ダンゼルの提案にリーリエは黙り込む。正直ヴェルランドが何故あの本のを持っていたのかはよくわからないが、恐らくあの本は魔導書の類。
(だから筆が必要だったのねー)
頭に響いた声の主が何故筆の場所を教えたのか、ようやく理解できたリーリエはどうしたものかと思案する。
今ここで、あの男から筆と本を自力で取り上げるのは無謀に近い。かと言って素直に要件を呑んでもダンゼルの事だ、嘘だなんだと言ってヴェルランドを本に封印するに違いない。
「どうした?、早くしろ。私に忠誠を誓うか?」
「私は…」
もうここまでなのか。
リーリエは、倒れ込むヴェルランドを見て覚悟を決める。
「私は…私は…」
ごめんなさい。
もう
貴方に迷惑はかけられない。
「私は…、貴方に…」
だから、私の決断をどうかお許し下さい。
「私は…貴方に忠誠を誓い…」
その時だったー。
突然、室内に閃光弾の様なものが投げ込まれ、リーリエは何者かに手を引かれ視界を遮られる。
突然の事にパニックになるリーリエは手足をばたつかせる。すると、耳元に聞き覚えのある声が響いた。
「嬢ちゃん!動くな!俺だ!」
(この声は、リヒトさん?…)
リーリエは言われるがまま、ようやく動きを止めると、数秒間の沈黙の後、ようやく視界が解放された。
「見えるか?」
「え、えぇ…、えっと」
何事かと周囲を見渡すと、見覚えのある兵士が数人室内に押し寄せる。
「あ、あれは…」
混乱するリーリエにリヒトは優しく微笑むと、「よく知ってんだろ?カノープスの兵士だよ」と答えた。
「何故、カノープスの兵がここに…?」
「んなの、嬢ちゃんを助ける為に決まってんだろ」
「私を…助ける………、あれ?、ヴェルランド…?ヴェルランド?ヴェルランドはどこです?!」
リーリエは慌てて立ち上がると、まだチカチカする視界の中ヴェルランドの姿を探す。
「ヴェルランド!ヴェルランド!」
すると、再び何者かに腕を掴まれ引っ張られ、今度は身体を抱きしめられた。
「キャ!、やめて下さい!」
「落ち着け。私だ」
リーリエはその声に、一瞬安堵するも直ぐに興奮した様子で辺りを警戒し始める。
「ダンゼル!ダンゼルが居ません!」
すると、何故か室内からは兵達の笑い声が響き渡る。
「…な、何を笑っているのです?」
ポカンとするリーリエを他所に、何故かヴェルランド本人も少し可笑しそうに笑いを堪えている。
「なっ!」
皆に笑われている事に気がついたリーリエは分かりやすく顔を顰める。
「なんなんですか…、一体…」
何が何だかわからないと言った様子のリーリエにヴェルランドは一つ咳払いをして見せると、彼女の手に封印の書を持たせた。
「これは…」
「最後のページを開いてみろ」
ヴェルランドの指示通り、リーリエは最後のページを開く。
すると、そこにはとても達筆なミミズ文字で、ダンゼルのフルネームが書かれていた。
「…こ、これ、誰が」
リーリエはいつの間にか封印の書にダンゼルの名前が書かれている事に混乱する。
「んなの、我らがヴェルランド様々の速記術ってやつよ」
何故かリヒトが偉そうに説明するが、リーリエは相変わらずポカンとした表情を浮かべている。
「…えっと、要するに?」
「今回の作戦は、一部のカノープスの兵やリヒトにも協力を仰いだ。まず私が先にリーリエを奪還、その隙にリヒトが筆の場所を特定、最後に兵と共に攻め入るつもりだったんだが…」
ヴェルランドはそこで参ったという表情で腰に手を当てる。
「まさか、既にお前が筆の場所を特定し、金庫を開けているのは計算外だった…」
「え…」
「そんで、ヴェルランドに気を取られたダンゼルに俺が閃光弾を投げ入れて、皆んなが怯んだその隙にヴェルランドが本に名前を書いたんだよ」
「閃光弾の中で?」
リーリエの反応に、ヴェルランドはポケットからサングラスを取り出す。
「これがあれば、問題はない。あとは時間との勝負だったが…、速記には慣れている…」
「なんたって元クイーンハウンドだからな、これくらいやってもらわなきゃ昇進は無理ってなもんよ」
リヒトはまるで自分ごとの様に、自慢して見せると嬉しそうにヴェルランドの背中を叩いた。
「いやぁ!!でも、なんか久しぶりの任務って感じで楽しかったぜ!」
「まだ喜ぶのは早い。カノープスへ戻るぞ」
「はぁ?戻るって、まだ戦争中だろ」
リヒトの言葉にヴェルランドはどこか勝ち誇った様に微笑むとリーリエから封印の書を取り上げた。
「このふざけた戦争を終わらせる」
「終わらせるったって…どうすんだよ」
「この書を交渉材料として提示する」
そうすれば、流石に奴らも負けを認めざるを得なくなる。
ヴェルランドの発言にリヒトとリーリエは顔を見合わせる。
「「認めなかったら?」」
「その時は私の出番だー」
人間相手なら負ける事はない。
そう言われて、リーリエは思わず小箱に入った神官者の筆を落としそうになる。
「ま、まぁ、ダンゼル…、何故貴方がここに?」
振り向くと、そこにはダンゼルが立っていた。
先程まで遠方の砂漠地帯にいたはずの相手に、リーリエの顔が恐怖に染まる。
「何故?」
ダンゼルは不気味に微笑むと、リーリエが持つ小箱を掴んだ。
「では、私も尋ねよう。何故、お前がこれを持っている。この箱はあの金庫に保管しておいたはずだが?」
「こ、これは…、その…」
その反応にダンゼルはリーリエから小箱を取り上げようとする。
「ダ、ダメ!」
「これは私の私物だ、勝手に触るなど言語道断!返せ!」
「い、いや!!」
リーリエは何がなんでも、箱を取られまいと必死に抵抗する。
「やめて!」
「この小娘!!殺されたいのか!」
「いや!!」
ダンゼルの物凄い力にリーリエは一瞬怯むも、何者かの力によって何とか持ち堪える。
「いい加減に!!!」
ダンゼルが魔法を唱えようとしたその時ー、
「リーリエ!!!!頭を伏せろ!!」
ヴェルランドの大きな声が屋敷内に響き渡った。
リーリエはその言葉に咄嗟に頭を伏せると、僅か数センチ頭上に弾がめり込む音が響いた。
突然の出来事にリーリエは思わず箱から手を離してしまう。
ヴェルランドはその後も何発かダンゼルに弾を打ち込むと、耳を塞いで座り込むリーリエの側へと駆け寄った。
「リーリエ!」
「ヴェルランド!」
二人は束の間の再会を喜ぶと、リーリエはハッと何かに気づいたかのようにその場に立ち上がる。
「箱が!」
「箱?」
慌てふためきながら辺りを探すリーリエに、ヴェルランドも辺りを見渡す。
「箱が!、箱の中に、筆が!!」
ヴェルランドはその言葉に、全ての事を理解すると同じように箱を探す。
「あそこだ!」
数メートル離れた場所に転がった小箱を発見したヴェルランドは急いで小箱を取ろうとする。しかし、その動きは後一歩の所でダンゼルに阻まれてしまった。
「ぐっ!」
魔法をかけられたヴェルランドはその場に倒れ込むと、苦しそうに唸り声を上げる。
「ヴェルランド!!」
「動くな!!」
ダンゼルの怒鳴り声にリーリエはその場に固まると、恐る恐るダンゼルを見つめた。
「全く。どいつもこいつも、目障りだ…」
ダンゼルはゆっくりとした動作で小箱を拾い上げると、何か閃いたかのように箱から筆を取り出す。
「そうだ…。目障りなら封印してしまえばいい。ちょうど、ここには本があるようだしな…」
ダンゼルはヴェルランドから封印の書を取り上げると、唾をつけてページをペラペラと捲り始める。
「確か…、重罪人は最後の方のページだったな…。」
ダンゼルは一つのページに辿り着くと、今度は至極嬉しそうに微笑んだ。
「さて、リーリエ。ここで一つ取引をしようじゃないか…」
「と、取引…?」
「お前が今後、死ぬまで私に忠誠を誓うというのならこの男は我が屋敷の牢に繋ぎ止めるに留めよう」
「嫌だといったら?」
「この男は永遠にこの本の中だ…」
ダンゼルの提案にリーリエは黙り込む。正直ヴェルランドが何故あの本のを持っていたのかはよくわからないが、恐らくあの本は魔導書の類。
(だから筆が必要だったのねー)
頭に響いた声の主が何故筆の場所を教えたのか、ようやく理解できたリーリエはどうしたものかと思案する。
今ここで、あの男から筆と本を自力で取り上げるのは無謀に近い。かと言って素直に要件を呑んでもダンゼルの事だ、嘘だなんだと言ってヴェルランドを本に封印するに違いない。
「どうした?、早くしろ。私に忠誠を誓うか?」
「私は…」
もうここまでなのか。
リーリエは、倒れ込むヴェルランドを見て覚悟を決める。
「私は…私は…」
ごめんなさい。
もう
貴方に迷惑はかけられない。
「私は…、貴方に…」
だから、私の決断をどうかお許し下さい。
「私は…貴方に忠誠を誓い…」
その時だったー。
突然、室内に閃光弾の様なものが投げ込まれ、リーリエは何者かに手を引かれ視界を遮られる。
突然の事にパニックになるリーリエは手足をばたつかせる。すると、耳元に聞き覚えのある声が響いた。
「嬢ちゃん!動くな!俺だ!」
(この声は、リヒトさん?…)
リーリエは言われるがまま、ようやく動きを止めると、数秒間の沈黙の後、ようやく視界が解放された。
「見えるか?」
「え、えぇ…、えっと」
何事かと周囲を見渡すと、見覚えのある兵士が数人室内に押し寄せる。
「あ、あれは…」
混乱するリーリエにリヒトは優しく微笑むと、「よく知ってんだろ?カノープスの兵士だよ」と答えた。
「何故、カノープスの兵がここに…?」
「んなの、嬢ちゃんを助ける為に決まってんだろ」
「私を…助ける………、あれ?、ヴェルランド…?ヴェルランド?ヴェルランドはどこです?!」
リーリエは慌てて立ち上がると、まだチカチカする視界の中ヴェルランドの姿を探す。
「ヴェルランド!ヴェルランド!」
すると、再び何者かに腕を掴まれ引っ張られ、今度は身体を抱きしめられた。
「キャ!、やめて下さい!」
「落ち着け。私だ」
リーリエはその声に、一瞬安堵するも直ぐに興奮した様子で辺りを警戒し始める。
「ダンゼル!ダンゼルが居ません!」
すると、何故か室内からは兵達の笑い声が響き渡る。
「…な、何を笑っているのです?」
ポカンとするリーリエを他所に、何故かヴェルランド本人も少し可笑しそうに笑いを堪えている。
「なっ!」
皆に笑われている事に気がついたリーリエは分かりやすく顔を顰める。
「なんなんですか…、一体…」
何が何だかわからないと言った様子のリーリエにヴェルランドは一つ咳払いをして見せると、彼女の手に封印の書を持たせた。
「これは…」
「最後のページを開いてみろ」
ヴェルランドの指示通り、リーリエは最後のページを開く。
すると、そこにはとても達筆なミミズ文字で、ダンゼルのフルネームが書かれていた。
「…こ、これ、誰が」
リーリエはいつの間にか封印の書にダンゼルの名前が書かれている事に混乱する。
「んなの、我らがヴェルランド様々の速記術ってやつよ」
何故かリヒトが偉そうに説明するが、リーリエは相変わらずポカンとした表情を浮かべている。
「…えっと、要するに?」
「今回の作戦は、一部のカノープスの兵やリヒトにも協力を仰いだ。まず私が先にリーリエを奪還、その隙にリヒトが筆の場所を特定、最後に兵と共に攻め入るつもりだったんだが…」
ヴェルランドはそこで参ったという表情で腰に手を当てる。
「まさか、既にお前が筆の場所を特定し、金庫を開けているのは計算外だった…」
「え…」
「そんで、ヴェルランドに気を取られたダンゼルに俺が閃光弾を投げ入れて、皆んなが怯んだその隙にヴェルランドが本に名前を書いたんだよ」
「閃光弾の中で?」
リーリエの反応に、ヴェルランドはポケットからサングラスを取り出す。
「これがあれば、問題はない。あとは時間との勝負だったが…、速記には慣れている…」
「なんたって元クイーンハウンドだからな、これくらいやってもらわなきゃ昇進は無理ってなもんよ」
リヒトはまるで自分ごとの様に、自慢して見せると嬉しそうにヴェルランドの背中を叩いた。
「いやぁ!!でも、なんか久しぶりの任務って感じで楽しかったぜ!」
「まだ喜ぶのは早い。カノープスへ戻るぞ」
「はぁ?戻るって、まだ戦争中だろ」
リヒトの言葉にヴェルランドはどこか勝ち誇った様に微笑むとリーリエから封印の書を取り上げた。
「このふざけた戦争を終わらせる」
「終わらせるったって…どうすんだよ」
「この書を交渉材料として提示する」
そうすれば、流石に奴らも負けを認めざるを得なくなる。
ヴェルランドの発言にリヒトとリーリエは顔を見合わせる。
「「認めなかったら?」」
「その時は私の出番だー」
人間相手なら負ける事はない。


