こっちを向いて、ヴェルランド。

「こちら、リク。特にヴェルランドらしき男は見当たりません。どうぞー」

リクは一人荒野の岩陰に隠れながら、ヴェルランドが現れるのを今か今かと待ち構えていた。

「リク。油断するな、奴なら既に我々の動きに気づいているはずだ」

時代錯誤なトランシーバーからアルベルトの不機嫌な声が響く。

「別に油断してないっスよ!普通に報告しただけじゃないっスか!」

「そう喚くな。ただでさえ暑いんだ…。体力は温存しておけ…」

アルベルトはそう言ってトランシーバーをしまうと、持っていた双眼鏡で周囲を見渡す。

日は既に沈みかけている。確か今日の予定は満月だったはずだ。

(不味いな…、このままだと俺らが喰われる羽目になる…)

何が何でも、月が昇るまでにリーリエを奪還しなければならない。

アルベルトは慎重にヴェルランドの姿を探す。

「さぁ、出てこい…」

夕日が辺り一面をオレンジ色に染め上げる。気持ち程度に育った草木の影がゆっくりと斜めに伸びていく。

「…どこだ」

すると、遥か遠方に物凄い速度で駆け抜ける何かを捉えた。

「先輩!ヴェルランドです!」

胸元にしまったトランシーバーから聞こえたリクの声にアルベルトは顔を顰める。

「先輩!聞こえてるっスか?ヴェルランド見つけましたよ!」

「リク、少し待て…恐らくー」

「俺言ってくるっス!」

リクにはアルベルトの返答が聞こえなかったのか、トランシーバーの電源を切ると荒野へと飛び出していった。

「おい、リク、リク!」

アルベルトは小さく溜息を吐くと、何かが掛けて行った方向とは逆の方向に双眼鏡を向ける。

案の定、そこには二つの人影が見えた。

(やはり、あれは囮。我々を撒くための手段と言うところか)

アルベルトは、クスリと静かに微笑むと。双眼鏡をしまう。

貴様がどんなカルマを背負っているかは知らないがお前にその女を守る資格はない。

この任務で無事にリーリエを奪還できればリクの言う通り昇進は間違いない。そして俺は晴れてクイーンハウンドの座を手に入れられる訳だ。

(そしたら、俺は永遠に次期女王の護衛。形は違えど永遠に彼女のそばにいられるのだ…)