翌日ー、
リーリエは暖炉のある部屋で目覚めると、慌てた様子で窓の外を確認する。
「よかった…、追っ手は来てはいない」
リーリエは安心した様子でその場に座り込むが、生憎天気は大雨である。
(どうしましょう…。)
流石にこんな雨では外も歩けない。
昨晩出会った男は一刻も早くこの屋敷から出ていってほしい様子であった。
「悩んでいても仕方がないわ。もう一度お願いに行ってみましょう…」
リーリエは両頬を叩いて気合を入れ直すと、髪を少し整えて廊下へと出る。しかし、そこでふと違和感に気がつく。
(やけに静かね…)
屋敷の中は昨日と同じで薄暗く、人の気配がまるでない。
本来、こういった大きなお屋敷には使用人が何人もいるはずだが、朝だと言うのに人の声一つ聞こえない。
リーリエは辺りを確認しながら昨晩足を踏み入れた大広間へと向かう。
広間は相変わらず薄暗く、大きな窓にはカーテンが閉められたままである。
リーリエは昨日訪れた部屋の扉の前に立つ。確か、昨日は黒いマントの男がこの部屋にいたはずだ。
また、怒られたらどうしようと思いながらも、恐る恐る扉をノックする。
「すみません、あの…」
しかし、部屋からは何の反応も返ってこない。
(まだ、寝ているのかしら?)
今度は強めに扉をノックする。しかし反応は変わぬまま扉をノックする音だけが虚しく広間に響き渡った。
リーリエは小さく溜息を吐く。これではお願いの仕様がない。
仕方なく元の部屋へと戻ろうと今し方歩いて来た廊下を引き返す。すると、元居た部屋の先に小さな調理場を見つける。
(そういえば、昨日から何も食べていない…)
リーリエはそう思うとごく自然に調理場の食料貯蔵庫を確認する。
貯蔵庫の中には乾燥したパンと干からびた干し肉、いつの物かわからないチーズが遠慮気味に肩を並べて保管されていた。
(卵でもあれば、何か作れるかもしれない…)
家主には申し訳ないが、腹が減っては戦は出来ぬ。
リーリエはそう考えると、村の食料店へと向かうことを決意した。


