翌日ー、
痛む頭を抑えながら、目覚めたリーリエは見知らぬ天井に慌ててベッドから転げ落ちた。
「随分と遅いお目覚めだな…」
ヴェルランドはそんなリーリエを見て溜息を吐くと、彼女の前へと膝をついて手を差し出してやる。
「ヴェ、ヴェルランド」
「…何だ」
「私、えっと…」
昨晩の記憶が曖昧なことにリーリエは顔を青ざめる。
「昨晩、お前は酒場で酒を飲んで酔い潰れ、私に管を巻いてここへと戻った」
そんなリーリエの思考を読み取ったのかヴェルランドは簡潔に昨晩の出来事を説明してやる。
「…ごめんなさい」
「まぁ想定内の事だ。気にするな」
ヴェルランドは特段気にする様子もなくリーリエの身体を起こしてやると、簡素な椅子へと腰掛けた。
「えっと…確か今日リヒトさんがこの街にいらっしゃるのですよね、どうやってコンタクトを取るのですか?」
リーリエは乱れた髪を整えると、恥ずかしそうに咳払いをして尋ねた。
「リヒトとなら連絡はとれている。もう少しでここに来るはずだ…」
ヴェルランドの返答にリーリエは小首を傾げる。
「どうやって連絡を?リヒトさんとは暫く会って居ないのですよね?」
「昔からどこの街にも情報屋が居る。宿屋の男に金を握らせて情報屋を呼び出し、リヒトにここへ来る様伝言を頼んだ」
何だか現実離れしたやり方にリーリエは「はぁ」と間の抜けた声を出す。
「そんなことより、調子はどうなんだ?お前が体調不良では動くに動けない」
「も、問題ありません!少し頭は痛みますが…」
リーリエの返答にヴェルランドはわかりやすく溜息を吐くと一本のペットボトルを差し出した。
「…これは?」
「ただの水だ。昨晩の帰りに買って置いた」
リーリエはそのボトルを受け取ると、とても小さな声で感謝を述べる。
「それから、これも…」
「これって…」
もう一度、差し出された手には一輪の花が握られていた。
「店は生憎閉まっていたが、ベンチの下に幾つか咲いていた」
「わざわざ摘んで下さったのですか?」
「一度言った事は守る主義だ」
ヴェルランドはそう言うと少し気恥ずかしいのか、そっぽを向いた。
「いらないのか?」
「い、いえ!要ります!」
リーリエは慌ててヴェルランドから花を受け取ると、嬉しそうにそれを見つめる。
「貴方って意外とロマンチストなのね」
「…ただ花を取ってきてやっただけだ」
どこか嫌そうに表情を歪めるヴェルランドにリーリエはクスリと微笑む。
「褒めているのよ?、もっと喜んで頂戴な」
「断る」
「まぁ、意外と頑固ね」
「今時の女は道端に咲いてる花を摘んできてやっただけで、相手をロマンチスト認定するのか?」
「そう怒らないで下さい。ちょっと揶揄っただけではありませんか」
「…」
悪戯っ子の様に微笑むリーリエにヴェルランドは黙り込む。どうも彼女と居ると調子を狂わされる。
黙り込んでしまったヴェルランドにリーリエ少し言い過ぎたと一つ咳払いをすると、そっと彼の腕に手を添えた。
「ごめんなさい少し言い過ぎました…。ヴェルランド、ありがとうございます。お花とっても嬉しいです」
素直に今の気持ち伝える。すると意外にもヴェルランドは優しく微笑んだ。
(あれ…、まただ…)
リーリエはふとそんなことを思った。確か以前にもあった気がする。
リーリエは一人動揺しつつも静かに微笑み返す。
(彼はいつも私を見てはいないー)


