「だから、わたくしは嫌だと言ったのです!!」
酒を呑み始めて数分後、リーリエは完全に管を巻いていた。
「いいですか!?ヴェルランド!わたくしは、こう見えて王国の姫なのです!」
かなり酒が回って居るのか、隣で左右に揺れながら喚き立てるリーリエの酒をヴェルランドは仕方なく一気に飲み干す。
「あ!なんれ飲むんですか!」
「出るぞ」
「わたくしはまだ飲んれます!」
ヴェルランドは相変わらず管を巻くリーリエを担ぐとバーテンの男に金を払った。
「お連れの方、大丈夫ですか?」
「あぁ、どうやらまだ酒の飲み方を知らないらしい。釣りは結構だ…騒いで悪かったな」
ヴェルランドは手短にそう伝えると、ふらつくリーリエを連れて店を出た。
「ヴェルランド!何故もう出てしまうのですか!私、まだ飲み足りないです!」
「お前は、もう少し酒の嗜み方を覚えるべきだ」
「まぁ!まるで自分はわかっているみたいな言い方ですね!」
人差し指を突き出しながら、ヴェルランドに詰め寄るリーリエにヴェルランドは溜息を吐く。
「絡み酒は品がないと教わらなかったのか?」
「わたくし、絡んでなんかいません!」
「絡んでいるだろう…」
ヴェルランドは、リーリエを近くのベンチに座らせると自身も隣へと腰掛ける。
「一先ずここで酔いを覚ませ。それだけ酔われては悪目立ちしてしまう」
現にBarでは、かなりの注目を浴びていた。
(奴らの仲間が居なければいいが…)
ヴェルランドは一人神妙な面持ちで周囲を警戒する。夜という事もあってそこまで人通りは多く無いが、それでも見てくれの良い女の姿に街ゆく人がリーリエの方へと視線を投げる。
「ヴェルランド…」
「何だ」
「ごめんなさい」
「…」
「私…、初めての事だらけで、少しはしゃいでしまいました…」
唐突な謝罪に、ヴェルランドは静かに耳を傾ける。
「カノープスに居た頃は、夜に外出なんて出来ませんでしたし…、それに何だか嬉しくて」
「何をそんなに喜ぶ事がある」
「こうやって、貴方と出掛けられる事が…」
「……やはり酔っているな」
「はい。酔ってます」
リーリエは酔いが回って居るのか、一人動揺するヴェルランドの肩へと頭を預ける。
「…おい」
まるでリリィの生き写しの様な彼女にそんな事をされては嫌でも過去のことを思い返してしまう。
『ヴェルランド、私は貴方と出掛けられて幸せです…』
遠い昔、彼女が放った言葉が今になって木霊した。


