こっちを向いて、ヴェルランド。

あまりにも突然の出来事に、全員の動きが止まる。それと同時に他の三人も人形の様に容易く四方へと放り出されるとリーリエは訳もわからず体を抱き起こされる。

「大丈夫か?」

そこには少し焦った表情のヴェルランドが居た。どうやら男達を物凄い勢いで蹴り飛ばしたのは彼の様である。

リーリエはあまりの恐怖から、ヴェルランドの身体に抱きつく。

「もう大丈夫だ…」

「…はい」

ヴェルランドはそんなリーリエを優しく抱きしめると、部屋の片隅で蹲る男達に銃を構える。

「さて、これは一体どういう事だ…返答次第では貴様らを撃つ必要がありそうだが…」

「ち、ちげぇんだ旦那!俺たちは関係ねぇ!」

ダグは咄嗟にそう言うと、懐から金を全て出して平謝りをする。他子分二人も同じように金を出すとその場に頭を下げた。

「…俺達はネルに言われてそれでー」

「お、おい!勝手な事抜かすな!もとあといえばお前らが!」

「うるせぇ!とにかく俺たちは無関係だ!」

「何だと!?この裏切り者!」

仲間割れを始めた男達に、ヴェルランドは呆れ返った様子で銃をしまう。

「今日のところは、その金に免じて許してやる…だが次は無いと思え…」

ヴェルランドの忠告に男達は肩を震わすと、慌てて部屋を出ていく。ネルが最後にが部屋を出て行こうとするとヴェルランドは苛立たしげに口を開いた。

「おい」

「は、はい!」

「こんな事があったんだ。宿泊料は当然無料だな…?」

「え…、いやそれは…」

「……無料だな?」

「はい。無料で結構です…」

ネルは青ざめながらそう答えると、頭を下げて部屋から出て行った。

ヴェルランドは小さく溜息を吐くと先程から腕の中で震えるリーリエの背中をさすってやる。

「…すまなかった」

怖い思いをさせてしまったことにヴェルランドは謝罪する。部隊に居た時こそこんなヘマはしなかったが、久しぶりの外ということもあり気が緩んでいたのは事実だ。

ヴェルランドの謝罪にリーリエはゆっくりと顔を上げると、首を横に振った。

「貴方が謝ることではありません…。助けていただき、ありがとうございます」

「何、護衛の仕事をしたまでだ。気にするな」

リーリエはヴェルランドの身体から離れると乱れた服を整える。

「それにしても、随分と早いお買い物でしたね?」

「あぁ、おかげで何も買えていない…」

ヴェルランドは両手をあげて自身が何も持っていない事を伝える。

「じゃあ、やっぱり私もご一緒しても?」

「致し方ない…」

その言葉にリーリエは嬉しそうに微笑むと、ヴェルランドの腕に手を回す。

「…何だ」

「護衛して下さるのでしょ?、さ、行きましょう。ちなみに私はここへ来た時の道沿いにあった出店の花屋がいいです」

「…何の話だ」

「あら、買って下さるのでは無いのですか?」

リーリエは悪戯っ子の様に微笑むとヴェルランドは恥ずかしそうにそっぽを向いた。

「一輪だけだぞ…」

その言葉にリーリエは再び微笑むと、半ば強引にヴェルランドの腕を引いて夜の街へと繰り出した。