こっちを向いて、ヴェルランド。

ヴェルランドがこの娘を取り返しに来る事は何となく予想していた。故に自動式荷車を複数台走らせて相手を撹乱する予定だったが、その作戦はものの数分で破綻した。

彼らの乗っていた荷車は派手に横転し、アルベルトはリーリエを庇う様にして車外へと転がり出た。

「ッ…」

「大丈夫か?」

「は、はい…。ありがとうございます。」

アルベルトはリーリエの無事を確認すると、咄嗟に背後へと銃を向ける。

「さすが、元クイーンハウンドのヴェルランド・ヴァイスハイト…。腕は鈍っていない様ですね」

「貴様と雑談している暇はない。さっさと女を返せ…」

ヴェルランドはどこか気怠そうに銃口をアルベルトへと向ける。何だかいつもと様子が違うー。

「何故この娘に構うのです?貴方が興味あるのは女王だけでしょう?」

「…黙れ」

「それとも女王そっくりな、この娘に情でも湧きましたか?」

「…黙れ」

「本当に瓜二つですもんね…。リリィ王女は実に罪深いお方だ…」

「黙れ!!!」

次の瞬間ー、ヴェルランドは容赦なくアルベルトへと発砲する。しかし、瞬時にアルベルトも銃を発砲し見事に銃弾を弾き返す。

「怒らないで下さいよ?僕はこう見えて銃の扱いは上手いんです」

アルベルトは得意気に鼻を鳴らすと、隣に佇むリーリエの身体を抱き寄せる。

「ア、アルベルト!?」

突然のことにリーリエは分かりやすく混乱の声を上げると、ヴェルランドは分かりやすく顔を顰めた。

「…今すぐ女から離れろ、さもないとー」

「どうするんですか?、醜い魔獣にでも変身しますか?」

「…」

ヴェルランドは少し動揺した様子で、アルベルトを見つめる。

「王国のデータベースで調べさせてもらいました。」

「…では、貴様らに隠す必要はない様だな」


ヴェルランドの一言に場の雰囲気が凍りつく。

「リーリエ」

「は、はい」

「これからここは危険な戦場になる。北に走れ。僕も後で合流する」

「で、ですが!」

「いいから行け!間違ってもここへは戻ってくるな」

アルベルトはそう忠告を残すと、リーリエの背中を押した。

リーリエは後ろ髪を引かれる思いで二人を見つめるが、ただならぬ雰囲気にその場から逃げる様にして森の中へと姿を消した。

「何故逃した」

「おや、変な事を聞きますね…。あのまま抱きしめてキスの一つでもしたほうが良かったですか?」

「…どうやら本気で殺されたいらしい」

その言葉を最後に、ヴェルランドは人間である事、理性を保つ事、道徳観や倫理観、その全てを解除した。