こっちを向いて、ヴェルランド。

貸りた三冊の小説を読み終えた頃、リーリエは手持ち無沙汰に大広間へと訪れていた。

(続きを貸りたいけど…、どうしましょう…)

先程からヴェルランドの部屋に行くかどうか迷っているリーリエは、大広間を右に左にと行ったり来たりしている。

彼に部屋へと招かれたのは、一昨日の事。最初は愛想良く招き入れてくれたものの、帰り際の彼の態度を見る感じ決して歓迎されていたわけではない様である。

リーリエはそっと大窓の前に置かれた椅子に腰掛けると小さく溜息を吐く。外では相変わらずザアザアと雨が降りしきり、晴れる気配がまるでない。

(一先ず、腹ごしらえでもしましょうか…)

ヴェルランドの部屋に本を貸りに行くかどうかは、後で決めればいい。

リーリエはそう思い直すと、調理場の方へと足を運ぶ。確か次の食料品配送サービスは明日である。

(そろそろ、ベーコンも切らしてきたから次は少し多めに買わなくては…)

ここだけの話、リーリエはあまり料理が得意ではない。作れるものといえば卵とベーコンを挟んだサンドイッチくらいで他にこれと言った料理は作れない。

(そろそろ、他のものも食べたいわ…)

そう思った時だったー。

パチン!

突然、部屋の電気が全て消え室内が暗闇に包まれる。

驚いたリーリエは叫び声を上げる暇もなく、その場に固まる。

(また、停電ー?)

しかし、シンと静まり返った室内から何者かの足音が響く。

誰か居る。

「ヴェルランド?」

「…」

「ねぇ、ヴェルランドなのでしょう?お願いだから驚かさないで…」

リーリエは震えた声で足音の相手に声をかける。しかし返答はない。

「ねぇ、ってば…」

コツコツ、、、

足音はリーリエの背後で止まった。

「もう、驚かさないで!ヴェルランド…?」






「すまないが、私の名はヴェルランドではない…」






聞き覚えのある声にリーリエの体が一気に強張る。



見つかってしまったー。




「さぁ、我々と共に来て貰おうか。リーリエ・ギモーヴ…」