「おい、女一人攫うのにこんな人数が必要か?」
王国シリウスの検問所で兵士は一人一人の通行パスを機械に認証させていく。
「一般兵如きが無駄な口を叩くな」
ゼロ部隊の指揮者であるアルベルトはその氷の様な眼差しを兵士へと向けると腕につけられた時計を確認する。
彼は先程から通行認証に時間を食っている事が許せない様だ。
「でもその兵士さんの言う通りっすよ。わざわざこんな大人数で行く必要あります?たかが女一人に…」
金髪の青年が、退屈そうに両手を頭の後ろへとやるとアルベルトはわかりやすく顔を顰めた。
「リク、お前はまだヴェルランドヴァイスハイトの恐ろしさを知らない様だな…」
「ヴェルランド、なんっすか…?」
「ヴェルランドヴァイスハイト…、我々と同じ元ゼロ部隊の人間だ」
アルベルトはようやく兵士から通行許可を受け取ると、助手席に座るリクへと通行パスを投げる。
「うお!、ちょっと、投げないでくださいよ!このパスは選ばれた人しか持てないンスから…」
リクはそう呟くと、通行パスを丁寧に胸ポケットへとしまった。
「でも本当なんすかその噂。何でもヴェルランドとかいう男は数年前に処刑されたらしいじゃないですか?」
リクは欠伸を噛み殺しながら運転席に座るアルベルトに尋ねる。
「あぁ、私もそう思っていた。しかし信頼できる情報筋によれば、どうやら彼はまだ生きている様だ…」
「本当に信頼できるんすか?達かその情報筋って餓鬼っスよね?」
「子供は大人より純粋で素直だ。話している姿や態度で嘘かどうかはすぐに解る」
アルベルトはそう言うと後部座席に積まれた菓子を指差す。
「報酬も破格の値段だしな…」
「どおりで荷物が多いわけだ。でも何でまたそんな男の所に居るンスか?確か捕虜の女はヴェルランドの事知らないっスよね?」
「それをこれから確かめに行くんだ。無駄口叩く暇があったら過去の記録にでも目を通しておけ。奴の弱点が掴めれば捕虜の奪還もすぐに済むからな…」


