いじわる主治医は、私にだけ甘い

コンコンとノックをして診察室の中に入る。
そこにはびっくりするくらいかっこいいお医者さんがいて、私は思わず3歩下がった(笑)

「こんにちは。俺はここの院長の桐ヶ谷彩人(きりがや さいと)です。どうぞおかけください」

椅子にかけるように促されて、何とか座るけど、緊張で何も考えられない。

「今日はどうされました?」

「えと、あの、やっぱりなんでもありません!」

そうやって勢いをつけて席を立とうとすると、腕を掴まれた。
私はクラっとしてその場にうずくまってしまった。

「貧血っぽいですね」

「いえ、大したことは無いんです。ごめんなさい、こんなことで病院に来て」

「大したことかどうかは俺が診て決めます。まずはここに来た自分を褒めてあげてください」

「はい……」

「だから逃げない。約束して」

「はいすみません」

「怖かったらそのまま伝えていいから。初潮はいつですか?」

「中一です」

「いつもこんなにフラフラしちゃうの?」

「ココ最近、仕事が忙しくてより酷くなりました。女性の先生なら診てもらってもいいかなと思ったけど、男の先生って知らなくてまだ怖いです」

「怖いよね。じゃあ今日は血液検査だけしましょう」

「いいんですか? あの内診台のらないで」

怖くて怖くて視界の隅からおいやっていたけど、あれは多分みんなやるやつだ。

「いずれはみせてほしいけどね」

「む、無理です」

「じゃあ検査と、普段飲んでる薬は俺が今日出すのに変えて」

「はい」

「今日はこれでおしまい。来週また同じ時間に予約いれるから来てください」

またってことは、またこの先生じゃん。

「文句ありますか?」

「というか。あの。ただ怖いだけです」

「花野さんだけじゃないですよ。みんな始めは怖いです。でも大事な体のことだから一緒に考えていきましょう」

「はい、ありがとうございます」

そうして診察室を出た。
待合室の噂よりずっと優しかった。
なんでだろ。

でも私はまだ知らなかった。
これが先生の表の顔のひとつだって。