いじわる主治医は、私にだけ甘い

ーside 慶人verー

キッチンには夕日が差し込んで、さとじいと僕は夕飯のエビのクリームパスタの準備をしていた。

「さとじい、なんであの子、冴ちゃんってあんなに子ウサギみたいなんだ?」

「はい、誠にかわいらしい方ですね」

「かわいい……? そうかこういう感情を可愛いっていうのか。見てると何だか胸がどきどきしてくる」

「きっともう、それは好きってことですよ」

「え、好き? それは困る、彼女は彩人の恋人だ」

「ええもちろんです。でも人間は色々です。自分の中にある感情にまで無理に蓋をする必要はありません」

「これが好き……?」

「信じられないというなら二人きりで話してみると良いですよ」

エビの殻を取っている手を止めて、さとじいを睨んだ。

「誰かの恋人をとるのはいけない」

さとじいも僕を見つめ返していった。

「でも私は彩人様にも慶人様にも本当の気持ちに嘘をついてほしくありません。ありのまま生き生きといて欲しいのです」

「さとじい、わかった。あとで彩人に頼んでみるよ。二人きり話せるように」

「確かめて、本当に好きだと思っても、慶人様は慶人様です。私はお二人を応援します」

「ああ、こんななよなよとした気持ちは初めてだ。言いたいのに言えない、言いたくないのに、言いたい。とにかく今はさっさと夕飯を作ってしまおう」

「はい、慶人様」

「なんだ」

「大変微笑ましゅう、ございますね」

さとじいは一目ぼれという言葉を胸に秘めていたが、直接は伝えなかった。