いじわる主治医は、私にだけ甘い

日本へ帰国して2週間が経った頃、彩人の病院の予約の日になった。

「ふぅ、憂うつだあ」

彩人とは言え、病院は病院。
しかも今日は大きな病院に紹介状を書いて、いよいよ手術ということになる。

「でも、がんばるぞー!」

胸元に輝くネックレスを見て、私は考え直す。
ハワイであった色々なこと。
彩人の家族、ハワイの景色、そして自分自身が成長したいと思ったこと。
それを思い出しながら、病院の入口をくぐった。

診察室に入るといつものように彩人が出迎えてくれる。

「お疲れ様。じゃあまず内診しようかな」

「はい、お願いします」

「えらい素直だな、今日は」

「今までの私と同じに思わないでください! 変わったんです」

とロボット歩きで内診台に向かい震えてたら、彩人に笑われた。

「花野さん、急に変わらなくて大丈夫ですよ。貴方は貴方らしくゆっくり変わっていけばいい」

「桐ヶ谷先生、ありがとうございます」

スタッフさんが見てるので、私たちは互いを苗字で呼び合うも、心は通じてる気がした。内診も優しくしてくれたので、いつもより本当に怖くなかった。

「では、手術ということで、準備に入る前に。執刀医は自分なんですが、助手に入ってもらう先生を紹介させてください」

「はい、よろしくお願いします」

「じゃあ今から入ってもらいますね。桐ヶ谷慶人、うちの副院長です」

「初めまして、桐ヶ谷慶人です」

診察室に颯爽と入ってきた人は、まるで生き写しのように彩人にそっくりだった。

「えーー?」

私は本当にびっくりして声が思わず漏れるほどに。
でもこの後思い知ることになる。
二人は見た目はそっくりでも中身は全く違う人物だということにーー
ハワイの波よりずっと高く、この二人に翻弄されるとはその時の私はまだ知らなかった。