いじわる主治医は、私にだけ甘い

「あの、突然押し寄せてごめんなさい。でも彩人さんと付き合って、まだほんの少ししか経ってないけど。覚悟は違うんだってことを示したくてきたんです。上手く言えないけど……私はただの図書館司書だったのに、彩人さんに出会って世界を広げてもらったんです」

「彩人は昔からそういうとこあるわね。誰かの心に風を吹かすような。ねぇ、でも冴さんだって彩人の心に火を灯したんじゃないかしら。だからこんなところまで連れてきたのよ」

「そうだ、覚悟ならとっくにできてる。冴と生きる覚悟」

「わ、私だって」

でも、私は手術から逃げて。
本当に自分なんかが彩人の恋人でいいのか、まだ夢を見てるみたいで。

その時、お義父さんが呟いた。

「完璧な相手なんか元よりいらない。凹んだところを埋めあえる、歓びは何倍も感じあえる、そんなふうに付き合っていけばいい」

「そうね、そうすればきっと、2人にしか作れない世界が広がっていく」

「ありがとう、父さん、母さん」

「ありがとうございます」

「凛もいるよー! 2人とも超お似合いだと思う。なんていうの? フィーリングが!? ソウルがぴったりみたいな」

「プッ凛、お前は黙ってろ」

「なにーおにいが好きなアラン・ウォンズの夕飯予約しといたの、凛なのに」

「凛様、ありがとう」

「凛ちゃん、アランウォンズってなに?」

「簡単に言うと、ハワイ料理の有名シェフかなー。向こうでミシュランみたいな扱い受けてる人だよ」

「なるほど! すごい。彩人が黙るだけある」

「ちなみにさい兄はけい兄と違って超大食いだよ。めっちゃ食費かかるから覚悟した方がいいよ」

何その情報!?
初めて知ったけど、たしかに彩人いつも何かしらもりもり食べてたし、私の残したやつとかもペロッと食べてた。

「まぁ、‎食うほうではあるな」

「冴ちゃんは少食?」

「そんなことはないんですけど」

「冴は体調に波がありやすくて。母さんに少し似てるな」

「あらそうなの。なら病弱同士仲良くしましょう」

「こらこら。それじゃあ行くか」

手を繋いで歓迎してくれるご両親。
当たり前の暖かな家族。
眩しくて、少し涙が出そうになった。