転生者公爵令嬢は王太子相手に商売で無双する。王太子妃なんかお断りイケメン執事の方が好みです

執務室に入ると父親は笑ってトスの肩に手をかけてトントンと叩いた。

「久しぶりだなあ。メロウ公爵家は休みもくれないのか?」

「そう言う訳ではありませんが、何も用事がないのに実家に帰る男はいませんよ。それに1年ほど前に前公爵が突然お亡くなりになってそれどころではないんですよ」

「ああそうだったな。でもメロウ家は今商会の方も順調で公爵が亡くなった後衰退するかと思われたが見事な起死回生じゃないか?トーマスの活躍も聞いているぞ」

「いいえ僕ではありませんよ。すべてジュリエッタお嬢様のお力なのです。今では4つの特許もお取りになってメロウ商会は王都でも注目されています」

「そうなのか?でもそんなメロウ公爵家の敏腕執事としてお前の名前も注目されているようだぞ。この所お前に婚姻の申し込みが絶えないのだ。嬉しいだろう」

「嬉しくなんてありませんよ。大迷惑です。メロウ家はやっと今スタートラインに立ったところなのですからまだまだお嬢様や公爵家を支えていかなければいけないのです。結婚なんてするつもりはありません」

「何を言っているのだ。一生メロウ家に飼い殺しにされるつもりか。このバタール伯爵家の一人娘との縁談はお前にとってもボン家にとっても上手い話なのだ。よく考えろ。こんな縁談もう来ないぞ」

「来なくて結構です。父上は僕に自分で生計を立てられるようにしろと常々仰っていたではありませんか。メロウ公爵家の執事の話には喜んでいらっしゃったでしょう?」

「それはそれだ。お前ももうすぐ23歳だ。こんないい縁談二度と来ないぞ。一人娘だから将来はバタール伯爵を継いでもらいたいという事だ。今のままでは平民となるしかないじゃないか」

「それでも私はメロウ家に仕える執事でそれ以外は望みません」

「馬鹿を言うな、今日はバタール伯爵ご夫妻とご令嬢も交えての晩餐会だ。そのつもりで盛装しておけ、いいな」

嫌も応もない。父親は最初からそのつもりだったんだ。それが分かっていれば来なかったのにと、トスは歯噛みする思いだった。

面倒なことになったと思ったが、今帰ればボン家の面目が丸つぶれだ。

晩餐会には長男のウイル(へレムヤーングッデイ)・ゲイル・ボンとその妻ミレイヤも出席すると言う。

晩餐会だけは出なくてはならないだろう。そこできっぱりと断るつもりだ。

盛装の服は持ってきていないので一応スーツを着たが、母が盛装を用意していたようだ。

次男の兄ドノバン(ドレアスカッレテイ)の物だが、この頃太ってしまって着られなくなったようでトーマスが持っていればいいと言って部屋まで持ってきたのだ。

トスは薄いブルーのジレにそれより濃い青の刺繍が入ったウエストコートにズボンは黒に近い藍色の盛装を身にまとった。

中の白いブラウスにはクラバットがついていて窮屈で鬱陶しかった。

とりあえずドノバンもトスと同じブルーの瞳だったのでそれに合わせて作ったのだろう。ドノバンは服に煩い人なのだ。