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12時15分。
この時間帯のイタリアンのお店は大抵混んでいる。ランチタイムど真ん中で、ガラス越しに見える店内はすでに満席に近く、外には同じように順番待ちをしている人たちが数組並んでいた。
「ヤヨー!」
お店の入り口で並んでいる佳奈子が、こちらに気づいて大きく手を振っている。
私は思わず小さく手を振り返したけれど、履き慣れていないヒールの高い靴のせいで、駆け寄りたくても思うように足が動かない。
一歩進むたびに足元が少しぎこちなくて、自分でも笑えてくる。
「あり?もしかして、靴擦れ?」
佳奈子のそばまでようやくたどり着くと、彼女はすぐに私の足元に視線を落として、心配そうな声を出した。
「そうなの。今日に限って新しい靴履いてきちゃって」
「大丈夫?絆創膏貼った?」
「一応貼ったんだけど、失敗したなー」
そう言いながら軽く笑って見せるけれど、実際は歩くたびにかかとがじんわり痛い。
慣れていない靴って、こんなにも容赦ないものなんだなと改めて実感する。
私とさほど身長が変わらないはずの佳奈子が、今日はこのヒールの高さのせいで、少しだけ小さく見える。
佳奈子は部署は違えど、同い年の同期として入社したての頃からの付き合いだ。
右も左もわからない時期、社内のルールに戸惑いながら一緒に残業したり、失敗して落ち込んだ夜にコンビニの前で缶コーヒーを飲んだり。
そんな積み重ねがあって、今でもこうして昼は一緒にランチをしたり、たまに退勤後に飲みに行ったりする関係が続いている。



