遅かれ、早かれ、恋になりまして。




ガタン、ゴトン、と一定のリズムで揺れる車両に身体を預けながら、私はスマホを見ているふりをして、画面の端からそっと彼を盗み見る。

通知欄を適当にスクロールしているのに、内容なんて全然頭に入ってこない。視線も意識も、全部あの人に持っていかれていた。


綺麗な顔で、どこか雰囲気をまとった人。たぶん、人によって好みは分かれる顔なんだと思う。

いわゆる爽やか系とは違うし、愛想がいいタイプにも見えない。笑ったらどんな顔をするのかも想像できないくらいで、少し近寄りがたい空気を纏っている。


でも、なぜか目が離せなかった。
視線を向けるたび、もっと見たくなってしまう。

ちゃんと正面から見たらどんな顔なんだろう、とか。声は低いのかな、とか。どんな表情で笑うんだろう、とか。そんなことばかり考えてしまう。不思議な人。


私のタイプって、こんな顔だった?

もっと爽やかで、誰にでも優しく笑いかけるような、いわゆる王子様系の顔が好きだったはずだ。友達と「芸能人ならこの人かっこいいよね」って盛り上がる時だって、いつも選ぶのは明るくてキラキラしたタイプ。

なのに、気づけば目で追ってしまう。たぶん理由は、顔だけじゃない。あの独特な空気のせいだ。



私の会社の最寄り駅に着くまでの15分。


ガタン、ゴトン、と規則的に揺れる電車の中で、私はスマホを見たり、車内広告をぼんやり眺めたり、窓の外へ視線を向けたりしながら、その合間にバレないようそっと彼を盗み見る。

ほんの数秒だけ視線を向けては、慌てて逸らす。また気になって、少し経つとつい見てしまう。その繰り返し。

自分でも何をやってるんだろうって思うのに、どうしても気になってしまう。