遅かれ、早かれ、恋になりまして。




距離が近いわけでもないのに、視線を向けられるだけで変に意識してしまう。どうしてこんなにドキドキしてるんだろう。今日初めてちゃんと話したばかりなのに。自分でも意味が分からなくて、余計に落ち着かない。


「……私のは、いつでも大丈夫です。これから頻繁に会うことになるでしょうし」


そう言いながら、自分で言った言葉に自分が一番動揺していた。これから頻繁に会う。仕事で関わる機会が増える。それは当たり前のことなのに、改めて口にすると急に現実味を帯びて、胸の奥が落ち着かなくなる。

有馬さんと、また会う。
今日だけじゃなくて、これから先も。そう思っただけで心臓が変にうるさい。気づかれたくなくて、私は誤魔化すみたいに視線を逸らした。


「でも、これがないと不便じゃないですか?」


有馬さんが私の手元を見ながら言う。落ち着いた声だったけれど、どこか本当に心配しているようにも聞こえた。


「あー……」


曖昧に言葉を濁す。

確かに不便ではある。移動中、私はほとんど毎日AirPodsを使っている。音楽を流していないと、朝の満員電車の空気に飲まれてしまいそうになるし、移動中に資料を確認する時だって必要になる。
でも、だからといって有馬さんの手を煩わせたくなかった。営業先の相手に、わざわざ時間を使わせるなんて申し訳ない。

私は「大丈夫ですよ」と言おうとして、口を開きかける。けれど、その前に有馬さんが先に言葉を続けた。


「いつも、朝の電車の時間は同じですか?」