遅かれ、早かれ、恋になりまして。




会議が終わり、資料の片付けが一通り済むと、高瀬課長が軽く手を叩いた。


「じゃあ、皆さんロビーまでご案内しますね」


その言葉に、NEXERA株式会社のメンバーが立ち上がる。


「明石さんは、資料まとめ少しお願いできる?」

「はい、分かりました」


扉が開き、皆が出ていく気配がする。最後に視界の端に映ったのは、有馬さんの背中だった。


「……。」


私は資料を手に取りながらも、すぐには動けなかった。
今なら間に合う。そんな考えが一瞬だけ頭をよぎる。


「あのっ」


気づいたら、声をかけていた。彼の足が止まる。ゆっくりと振り返る。


「はい」


さっきまで会議室で見ていた仕事の顔とは少し違う、静かな表情だった。私は一度だけ息を吸う。


「すみません、あの…朝、駅のホームでぶつかってしまって」


言いながら、彼の表情を確認する。すると彼は、少し目を見開いた。


「やっぱりそうですよね。最初会ったとき、あれ?と思って」


ロビーで会ったときの彼を思い出す。目が合った瞬間、わずかに目を見開いていた。

……わかってたんだ。覚えてたんだ、私のこと。嬉しさとかそんなものよりも恥ずかしさのほうが勝ってしまう。