遅かれ、早かれ、恋になりまして。




「それより、先に並んでくれてありがとね」

「いいって、いいって。明日プレゼンあるんでしょ?大手だっけ?」

「そうなの。緊張する…」


そんな話をしているうちに、ちょうど名前を呼ばれて店内へと案内された。扉が開いた瞬間、ふわっとトマトとガーリックの香りが広がる。

オフィス街ということもあって、周りはスーツ姿のサラリーマンやOLらしき人たちでほとんど埋まっていて、ランチタイム特有のざわついた空気が店内を満たしていた。

席に着くと、私はテーブルに置かれた二つのメニューのうちひとつを佳奈子に渡す。


「私はいつも通りカルボナーラかな~」

「私はミートソースって言いたいところだけれど、口の周りオレンジになっちゃうかな?あ、期間限定でてる」

「ヤヨ、期間限定に弱いもんね」


佳奈子はメニューを覗き込みながら楽しそうに言う。実際その通りで、私はだいたい“期間限定”とか“本日おすすめ”とかいう言葉に弱い。限定、というだけで価値が上がる気がしてしまうのだ。

一方の佳奈子は、決まってカルボナーラだ。一度これ、と決めたら飽きるまでそれを選び続けるタイプで、そのブレなさはある意味羨ましいくらいだと思う。

私はというと、その真逆だ。佳奈子の言う通り、期間限定に弱いし、そもそも選ぶこと自体が苦手だ。あれもいい、これもいい、と頭の中で候補が増え続けて、最終的に一番無難なものに落ち着くか、勢いで決めるかのどちらかになる。

しかもそれは、食べ物に限った話じゃない。服も、靴も、仕事の進め方も、人との距離感すら、全部どこか同じで、ひとつに決めきるのが下手くそだ。