――自分には、治癒の力がある。
ここに来てから使うことはなかったため、
すっかり記憶の奥に埋もれていた力。
でも、今なら――あれを使えば、ルカの傷を癒せる……!
そう思い、雫は恐る恐る腕の中のルカの傷に手を伸ばした。
しかし、ルカがかろうじて開いた赤い瞳を雫に向け、
ぎゅっと手を掴んで止めた。
「………やめ、ろ。それは……使、うな……」
青ざめた顔で言うルカ。
雫の心臓は一瞬止まったように感じた。
「なんで……!?このままじゃ、ルカ死んじゃ――!」
荒げた声が出そうになったが、雫は咄嗟に手で口を押さえた。
大声を出せば、すぐに侵入者に気づかれてしまう。
それでも、心の奥では怒りと恐怖が渦巻いていた。
どうしても……黙っていられない。
ルカが苦しんでいるのを、ただ見ているなんて、絶対にできない。
ルカの腕に触れる手が、微かに震えながらも、
彼を守ろうと必死に伸びていく。
部屋の外では、荒い足音と怒声がますます近づく――。



