ルカはかすかに目を閉じ、雫の胸に顔を埋める。
途切れ途切れに「逃げろ」と繰り返すその声に、
雫はぎゅっと抱きしめ返した。
森の向こうから迫る足音や松明の光――すべてが、今は関係ない。
ここにいるルカを、絶対に守る。
それだけが、雫の全てだった。
ドタドタドタ――!!
荒々しい足音と共に、家の中に誰かが踏み込んできた。
「吸血鬼の根城だ!!
隈無く探せ!絶対に逃がすんじゃねぇ!!」
怒声が絶え間なく響き渡る。
雫はぎゅっと身を縮め、ルカを抱えたまま震えた。
リビングを走り回る人間の足音が、床を叩き、
緊迫感が部屋中に満ちていく。
その時、雫の胸に、かすかな希望の光が走った。



