「……あ」
小さくルカの声が漏れた。
雫は振り返る。
「どうしたの?」
月明かりの下、ルカはポケットをまさぐりながら、
わずかに眉をひそめていた。
探している指先が、何度も同じ場所をなぞる。
「……マッチ、落としてきたかもしれねぇ」
その一言に、雫はすぐ事情を察した。
人間の貨幣を持たず、町へも簡単に出られないルカにとって、
火を起こせるマッチは――ただの道具じゃない。
生活に直結する、大切で、貴重なものだ。
「え……ほんと?」
雫は思わず声を上げる。
「じゃあ、今からでも探しに――」
くるりと来た道を振り返り、足を踏み出しかけた、その瞬間。



