「……あんまり長くいて風邪引いてもいけねぇし、そろそろ戻るか」
ルカの声は、普段の落ち着いた口調とは少し違い、柔らかくて温かい
響きがあった。
「うん、そだね!」
雫は最後の瞬間まで、空を見上げる。
月も星も、湖に映る月光も、すべてを目に焼き付けようと、
胸いっぱいに景色を吸い込む。
それからふっと目を逸らし、雫は小さく息を吐くと、
そっとルカの横を歩き始めた。
湖畔の夜風に背中を押されながら、二人は静かに、
家へと続く森の道を辿っていく。
夜の闇は深いけれど、隣にルカがいるという安心感が、
雫の心をあたたかく満たしていた。
森の中を歩くこと、しばらく。
木々の隙間から、見慣れた小さな家の輪郭が見えてきた。
雫はほっと息をつき、玄関へと歩み寄る。
扉の前に立ち、ノブに手をかけた、その時だった。



