扉の向こうは、暗かった。
けれど、雫の部屋とは違う暗さだった。
空気が動いている。音がある。
息を殺しながら、雫は廊下を進む。
床に落ちた影が、揺れている気がして、何度も立ち止まった。
――起きてない。
――気づかれてない。
自分に言い聞かせるように、胸を押さえる。
玄関の戸に手をかけたとき、指が冷たくなっていることに気づいた。
震えを止めようとしても、うまくいかない。
そっと、音を立てないように押す。
――ぎい。
小さな音が、夜に溶けた。
雫は外へ出た。
瞬間、息を呑む。
空が、あった。
広くて、深くて、暗い空。
雲の切れ間から、星がいくつも瞬いている。



