ルカはいつも、ベッドのすぐそばの椅子に腰掛けて。
「……ちゃんと寝ろよ」
「うん……」
眠くなるまで、そこにいてくれる。
何も言わなくても、雫が眠るまで、立ち上がらない。
目を閉じる直前。
薄くなる意識の中で、雫はいつも思う。
怖いはずだった。
吸血鬼と一緒にいるなんて。
それなのに――
この人は、雫が知る誰よりも優しくて、誰よりもあったかい。
「怪物」なんかじゃない。
ただの――普通の男の子だ。
そんな当たり前の事実が、胸にすっと落ちてくる。
窓の外で、夜の森が静かに息をする。
その中で、二人の時間だけが、穏やかに流れていた。
――この幸せが、いつまでも続いてほしい。
そんな都合のいい未来を、願ってしまうくらいには。



