それでも、扉はそこにあった。
開いている。
胸が、どくん、と強く脈打った。
怖い。
何かの罠かもしれない。
もし、両親が扉の向こうで待っていたら。
もし試されているだけだったら。
考えただけで、背筋が冷たくなる。
――でも。
扉の隙間から、空気が流れ込んでくる。
いつもより、少しだけ冷たい。
知らない匂い。
外の匂いだ。
雫の指先が、震えた。
この先には、
雫が何度も、何度も夢の中で思い描いた世界があるかもしれない。
森。空。夜。
そして、誰にも利用されない場所。
行きたい。
でも、行ってはいけない。
分かっていた。
雫は良い子だから。
足が動かない。
もし見つかったら、今度こそ、本当に――壊れてしまう。



