ルカは、そんな雫を見て、また少し笑った。
「……いいから。無理すんな」
そう言って、くるりと背を向ける。
「簡単なもんしかねぇけど……
今は、それで我慢してくれ」
その背中は、さっきまでよりも、ずっと軽そうだった。
雫は、少しだけ呆然としながら、その後ろ姿を見つめる。
――食べ物を勧められる。
――心配される。
――「無理するな」と気遣われる。
そんな当たり前のことが、胸の奥に、じんわりと染みていく。
「……はい」
小さく、でも確かにそう返事をすると、雫はそっと、微笑んだ。
朝の光の中で。
この小さな部屋は、今までで一番、あたたかい場所に思えた。



