「……」
雫は無意識のまま、すりすりと優しく撫でる。
撫でられているルカは、最初こそ戸惑ったように瞬きをしていたが、
やがて、その表情がゆるんでいった。
赤い瞳がゆっくりと細められる。
「……」
何も言わない。
止めもしない。
むしろ――
その場にじっとして、雫が撫でやすいようにほんの少しだけ身を預けている。
その様子があまりにも自然で、雫は思わず、くすっと笑ってしまった。
やっぱり、この人は......。
こんなふうに、誰かに撫でられて、目を細める存在が。
人々が言うような、恐ろしい怪物には、どうしても見えなかった。
朝の光が静かに部屋の中を満たしていく。
その中で、二人だけの、穏やかな時間が流れていた。



