雫は、無意識のうちに一歩、近づいていた。
怖い、と思うより先に、放っておけない、という気持ちが勝っていた。
「……そんな……」
言葉が、続かない。
自分の指先が、震えているのが分かる。
――痛い。
あの怪我は、きっと、とても痛い。
雫は、ぎゅっと唇を噛んだ。
それでも、目を逸らさなかった。
「……痛く、ないんですか……?」
問いかける声は、ほとんど祈りだった。
ルカは、少しだけ困ったように視線を逸らす。
「……痛ぇ、けど。」
短く、正直に。
その一言が、雫の胸を打った。
この人は、痛みを、ちゃんと感じている。
雫は、そっと手を握りしめる。



