「はい、もう大丈夫」
傷口にそっと触れると、淡い光がにじみ、ゆっくりと塞がっていく。
「わぁ……!すっげぇ!」
子どもが目を輝かせる。
その無邪気な笑顔に、雫も自然と笑みをこぼした。
「気をつけてね。もう転ばないように」
「「はーい!」」
「せんせーありがとー!!」
元気よく返事をして、また駆けていく背中を見送る。
静かに立ち上がり、ふと湖の方へ目をやった。
風に揺れる水面。
きらきらと光るその景色に、あの日の記憶が重なる。
「……ねぇ、ルカ」
小さく、呼ぶ。
返事は、やっぱりない。
それでも――
「私、ちゃんと笑えてるよ」
胸に手を当てて、そっと目を細めた。
痛みが消えたわけじゃない。
忘れたわけでもない。
それでも、前を向いて生きている。
あの日、ルカが守ってくれたものを。
繋いでくれた未来を。
大事に、大事に抱えながら。
「また来るね。」
風に溶けるような声で、そう呟いた。



