「鈴宮せんせーー!涼太が転んで肘擦りむいたぁ〜!」
元気な声とともに、背後から駆けてくる2つの足音。
雫はゆっくり振り返る。
「あらら、ほんと?それは大変」
くすりと笑って立ち上がる。
白衣についた葉を軽く払って、駆け寄ってきた子どもと
目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「見せてごらん」
優しく声をかける。
この森も、随分と変わった。
かつては人の気配もまばらだった場所に、
今では小さな村ができている。
雫はそこで、村医者として暮らしていた。
ルカが死んでから、ポッカリと心に穴が空いたように
何も手につかなかった私に医者としての道を示してくれたのは、
当時はまだできたばかりだったこの村の村長をしている
おばあさんだった。
怪我をすれば呼ばれ、
熱が出れば頼られ、
誰かが泣けば、そっと寄り添う。
治癒の力も、隠すことなく使っている。
それでも、誰も怖がらない。
むしろ――「ありがとう」と笑ってくれる。
大好きで、大切な人たち。
家族みたいな、あたたかい存在。



