ぽかぽかとした春の陽気が、雫の頬をやわらかく撫でる。
昔――ルカと星空を見たあの湖のほとりに腰を下ろし、
空を見上げる。
隣には、石造りの小さな墓標。
「……今日もあったかいねぇ……」
ふっと笑って、ぽつりと呟いた。
風がそよいで、草が揺れる。
あの日と、どこか似た心地よさ。
けれど――隣にいるはずの人は、もういない。
あれから5年が経った。
治癒の力のことや、吸血鬼の味方をしていた処遇など、
最初の2年間は思い出したくもないほどに大変だった。
最終的に、吸血鬼ではなくルカ個人の味方だと主張したこともあり、
私の処遇は問われなかった。
雫は今年で23才。もう立派な大人だ。
王都では先日、ほぼすべての吸血鬼が処刑されたらしい。
街は連日、お祭り騒ぎ。
喜びと安堵に満ちたその空気を、
雫は遠くの出来事みたいに聞いていた。
「………。」
小さく息を吐く。
それが良いことなのかどうか。
もう、よく分からなかった。



