それでも、立ち続けた。
「私の……っ、大好きな人なんだよ……っ!!」
その言葉に一瞬だけ、周囲のざわめきが揺れた。
けれど――すぐに、嘲笑と罵声にかき消される。
「吸血鬼にたぶらかされてるぞ!」
「目を覚ませ!」
「そいつは人を喰う怪物だ!」
違う。
違うのに。
「違う……っ!!」
叫ぶ。
必死に。
否定するように。
「泣きたくなるくらい……眩しくて、優しくて……っ」
もう、限界だった。
ルカが何をしたというのだろう。
ここにいるこの人たちに、一体なんの危害を加えたというのだろう。
「ちょっと天然で……甘えたがりで……」
涙が止まらない。
「意外といたずらっぽくて……純粋で……素直で……っ」
一つ一つ、思い出す。
ルカの笑顔。
声。
触れた温もり。
「そんな……っ、どこにでもいる……っ、
あったかい普通の男の子なんだよ……!!」
叫びきった瞬間、膝から力が抜けそうになる。
「……嫌だ……」
かすれた声が、こぼれる。
「嫌だよ……」
フェンスに額を押し付ける。
冷たい感触が、現実を突きつけてくる。
「ルカが死ぬなんて……」
呼吸が、うまくできない。
「そんなの……嫌だ……っ……」
その声はもう、祈りだった。
壊れそうなほど弱くて、けれどどうしようもなく強い――
たった一つの願い。
もっと話したいことがたくさんある。
知らないこと。
聞きたかったこと。
まだいっぱいあるんだ。



