雫と出会ってから、心のどこかで錯覚していた。
自分も、少しは“普通”に近づけたような気がしていた。
この子の隣にいる間だけは。
この子が笑ってくれる間だけは。
ほんの少しだけ、綺麗なものになれた気がした。
そんなはず、なかったのに。
ルカはわずかに目を伏せる。
(ごめんな)
心の中で呟く。
雫。
隣にいてやれなくて。
何も言わずに、勝手に離れて。
結局、最後までこうして見せてしまって。
全部、俺のせいだ。
全部が中途半端で、上手くやれなかった、俺の。
唇がわずかに動く。
声にはならないまま、もう一度だけ。
(............ごめんな。)
そしてルカは、ゆっくりと前を向いた。
金網の外にいる雫から、視線を切るように。
その瞬間、歓声が一段と大きくなった。



