兵士は広場に向かって声を張り上げた。
「こうして我々は!!!
吸血鬼という忌まわしき血族の根絶やしに!また一歩近づくのだ!!」
その言葉を合図に、広場が一気に沸き立つ。
「殺せ!!」
「やれ!!」
怒号と歓声が重なり合い、熱の塊みたいに押し寄せる。
雫の耳には、それらのすべてが遠くの出来事みたいにしか
聞こえなかった。
ただ一つだけ、目の前の現実だけが鮮明だった。
金網の向こうで、引きずられるように立たされているルカ。
そしてそのルカが――もう一度だけ、雫を見た。
今度は逃げない目だった。
弱さでも、助けを求めるでもない。
ただ静かに、まっすぐに。
そこにあったのは、ひとつだけ。
(来るな)
そう言っている目だった。



